足首の捻挫をしてしまったとき、あなたはどうしていますか? 多くの人は「ちょっとひねったくらいだからすぐに治るわ」と、特に何もせずに放っておきます。ですがこれが、足首の捻挫の痛みがなかなか治らない最大の理由です。
足首の捻挫を甘く見ると、その「ちょっとした痛み」が何年もずっと残ってしまいます。足首の捻挫を1日でも早く完璧に治すためには「すぐに応急処置をする」ことと「しっかりリハビリトレーニングをする」ことがものすごく大切です。
今回の記事では、まず「どのように足首の捻挫が起こるのか」そのメカニズムを解説し、その後、足首の捻挫をを1日でも早く治すためにするべきことをお伝えします。
>>今回の参考文献はこちら。
「National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Conservative Management and Prevention of Ankle Sprains in Athletes」
アスリートによる足首の捻挫のケアや予防についてまとめられた、米国アスレティックトレーナー協会発表のポジションステイトメントです。トレーナーは全員必読ですよ。
足首の捻挫は運動中に起こる怪我第1位
「足首の捻挫」は、運動・スポーツ中に一番多く起こる怪我と言われています。ある研究によれば、運動中の怪我において足首の捻挫は全体の約45%をも占める、と報告されています。
今回の参考文献の引用として使用されている研究の1つであるFongらによる研究では、足首の捻挫が起こりやすいスポーツとして「陸上ホッケー」が一番多かったと報告しています。
それに続いて、「バレーボール」「アメフト」「バスケットボール」「チアリーディング」「アイスホッケー」「ラクロス」「サッカー」「ラグビー」「トラックアンドフィールド(陸上競技)」「体操」「ソフトボール」が挙げられました。
ほとんどの足首の捻挫は「内反捻挫(ないはんねんざ)」と呼ばれるもので、足首の捻挫の90%以上は内反捻挫です。内反捻挫とは、足首の外側のくるぶしの周りにある靭帯(前距腓靭帯・踵腓靭帯・後距腓靭帯など)を損傷してしまう捻挫をさします。
他にも、内反とは逆側にひねってしまう「外反捻挫(がいはんねんざ)」や、バスケットのピボットのような動きをしたときに足首の前側(外くるぶしと内くるぶしのちょうど間あたり)をいためてしまう遠位脛腓靭帯捻挫(えんいけいひじんたいねんざ)などがあります。
足首を捻挫してしまう原因
運動・スポーツ中に一番内反捻挫が起きやすいシチュエーションは「ジャンプをしたあとの着地」と「プレー中に誰かの足を踏んでしまう」ことが挙げられます。
また、「過去に内反捻挫をしたことがある」というのも、捻挫をしてしまう可能性を高めます。
さらに、一度足首を捻挫してしまうと、以下のようなことが起こる可能性があります。
- 再び足首を捻挫しやすくなる
- 足首の痛みがなかなか治らない(消えない)
- QOL(Quality Of Life)の減少
- 運動パフォーマンスの低下
- 足首が不安定になる
- 足関節の関節炎になる危険性が高まる
QOLとは、一般に、ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた生活の質を指し、つまりある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度として捉える概念のこと(Wikipediaより)
ちょっとだけトレーナー向けに。足関節捻挫の評価の1つとして知られている「オタワアンクルルール(Ottawa Ankle Rules)」は、今回の参考文献であるNATAポジションステイトメントでも、Evidence A(=かなり信頼できるという意味)として紹介されています。詳しくは「Ottawa Ankle Rules|オタワアンクルルールで骨折の有無を知る」を読んでいただき、ぜひ覚えて使ってみてください。
足首の捻挫を早く治すための処置方法
足首を捻挫してしまったら、甘く見ずにしっかりと応急処置をすることが、1日でも早く治すためのキーポイントとなります。
1)PRICE(プライス)
足首の捻挫でまずするべき応急処置は「PRICE(プライス)」です。
詳しくは「怪我の応急処置にはPRICEがベスト|適切な処置で最短の復帰を」の記事で解説しているので、ぜひこちらをお読みください。
簡単にここで解説すると、PRICEとは「Protection=保護」「Rest=安静にする」「Ice=冷やす」「Compression=圧迫する」「Elevation=心臓より高く挙げる」の5つの応急処置の頭文字をとったもの。
足首の捻挫をしてしまったらすぐにこのPRICEをすることで、痛みを和らげ、腫れを最小限に抑え、損傷の範囲を最小限にとどめる(=二次的低酸素障害を防ぐ)ことができます。痛みや腫れが落ち着くまで(2〜5日ほど)は、1日数回のPRICEを続けましょう。
PRICEの1つである「アイシング」とは逆の「温める」ことは、足首を捻挫したすぐ後には行わないようにしましょう。怪我をしてすぐ(怪我をしたその日〜2-3日後まで)に温めると、悪化させてしまう恐れがあります。
2)病院(整形外科)に行って医師に診てもらう
足が地面につけなくて体重をかけられないほどの痛みがあったり、あまりにパンパンに腫れた場合は、整形外科を受診して医師に診断してもらいましょう。
「足に体重をかけられなくて歩けない」というのは、オタワアンクルルールのチェック項目の1つになっています。これは足の骨の骨折の可能性がありますよ、ということを意味します。
レントゲン・MRI・CTといった画像による診断を受ければ、すぐに骨折の有無や捻挫の程度はわかります。もし骨が折れている場合は、松葉杖や足首を固定するブーツを使って体重をかけないようにした方が早く治ります。
ちょっとひどいかもな…と感じたら、必ず一度整形外科で医師に診てもらいましょう。
足関節捻挫の処置・ケアの1つとして「非ステロイド性抗炎症薬の使用」は、今回の参考文献であるポジションステイトメントではエビデンスレベルが最も高い「A」となっています。病院で診察を受けると、炎症を抑える薬を処方してもらうことがあるかもしれませんが、もしもらったらしっかり飲みましょう(もしくは塗りましょう)。
3)早期からのリハビリ
これは、アスレティックトレーナーや医者など、プロの医療従事者が「運動をはじめていいよ」と言ってからやり始めるというのが大前提です。
完全に靭帯が切れてしまっているGrade 3の捻挫でなければ、全く動かさずにただ固定しておくよりも、早い段階で足首を軽く動かし始めた方が(=軽いエクササイズをはじめたほうが)痛みや腫れが早く消え、早く治ることが多くの研究によって証明されています(=エビデンスレベルは最高のAです)。
具体的な足首のトレーニングについては「足首の捻挫を予防するために日頃からやるべきトレーニング10選」で紹介しています。怪我して直後にやるには強度が高すぎるものも含まれているので、勝手にはやらず、必ず医師・理学療法士・アスレティックトレーナーなどの専門家と相談しながら行いましょう。
ちなみに、Grade3(靭帯の完全断裂)の場合は、最低でも10日間はギブスや装具などで固定されるべきです。必ず病院に行って医師の指示に従ってください。
まとめ
足首の捻挫を1日でも早く治すためにするべきは以下の3つです。
- 早期の応急処置「PRICE」
- 整形外科を受診して医師に診てもらう
- 専門家と相談しつつ、早い段階から足首を動かし始める
足首の捻挫を甘くみてはいけません。最初のちょっとしたケアをするだけで、その後の治りが全然違います。
足首の捻挫をしてしまったら、ぜひこの3つを行いましょう。
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