つい先日、高校生のアメフトのキャンプで働いた時、はじめてBoutonnière Deformity(日本語では 「ボタン穴変形 」と言うみたいです)を見ました。
教科書で習っただけのケガだったので「あっ!Boutonnièreだ!」って見てすぐ思ったものの、いまいち曖昧だったので、若干マニアックなケガではありますが、ここでまとめておこうと思います。
ボタン穴変形と一緒に、Swan-Neck Deformity(スワンネック変形)も合わせてまとめます。
突き指パート1の記事は「突き指対処法|”ただの突き指” だと思ってしまうのは危険です」です。こちらもぜひお読みください!
>>参考文献はこちら。
- Overview of Wrist and Hand Injuries, Pathologies, and Disorders: Part 2
指と手首の怪我について簡単にまとめられた記事です。詳細に書かれています。 - Arnheim’s Principles of Athletic Training: A Competency – Based Approach 14th edition
ATCプログラムの大学院時代に使っていた教科書です。今だにわからないことがあると開いて調べます。
ボタン穴変形(Boutonnière Deformity)とは?
ボタン穴変形とは、指の伸筋(指を伸ばす筋肉)の腱が、第二関節(解剖学的に言うと、近位指節間関節=PIP関節)のところで切れてしまうことによって起きる変形のこと。
上の画像で見てみると、「PIP Joint in Flexion」と書いてある部分で腱が切れてしまいます。
どのように起きるのか、そのメカニズムとしては、突き指のように、何かが指の先端に強く当たること(バスケットボールが指の先端に当たる/手を地面につくときに誤って指をついてしまうなど)で、急激に指の第一関節(=遠位指節間関節/DIP関節)が伸展し、第二関節が屈曲することで、腱が切れてしまって起きます。
このボタン穴変形が起きると、第二関節を伸ばすことができなくなり、第一関節を曲げることもできなくなります。さらに、すごい痛みと腫れが症状としてあらわれます。
するべき応急処置は、まずはRICE(アイシング)。氷で冷やすことで痛みを和らげましょう。痛みで指が硬直してしまうことが多いので、アイシングをすることでその硬直を抑えます。
【追記:2017/12/15】RICEにPを加えた「PRICE(プライス)」と呼ばれる応急処置の方法を詳しく解説した記事「怪我の応急処置にはPRICEがベスト|適切な処置で最短の復帰を」をアップしました!ぜひ読んでみてください。
その後(もしくはアイシングをしながら)、すぐに病院へ行って医者にみてもらいましょう。多くの場合は、副木(上写真・下リンクのようなもの)をあてて固定することになります。
このボタン穴変形は、ちゃんと処置がされないと、一生第二関節が曲がったままになってしまったり、うまく指が動かなくなってしまうことがあります。
Swan-Neck Deformity(スワンネック変形)とは?
スワンネック変形とは、その名の通り、指がスワン(=白鳥)のネック(=首)のようになってしまうこと。
もう少し詳しく言うと、第一関節(=DIP関節)が屈曲し、第二関節(=PIP関節)が過伸展を起こしてしまう変形のこと(上画像参照)。これはつまり、ボタン穴変形とは正反対のことが起きている変形です(ボタン穴変形は、第一関節が過伸展で第二関節が屈曲)。
このスワンネック変形が起きるメカニズムは、大きく分けて2種類あります。
1)関節リウマチ
関節リウマチになると一番影響を受ける関節が、指の第二関節だそうです。指の第二関節が炎症によって腫れてしまうことで、掌側板がストレッチされます。
掌側板(下画像のVolar Plate)とは、指の第二関節の腹側(=手のひら側)にある軟骨のことで、関節が過伸展しないように抑えているもの。
腫れによって掌側板がストレッチされている状態が続くと、掌側板がゆるくなってしまい、第二関節が過伸展を起こしてしまいます。
それによってその指の伸筋(=指を伸ばす筋肉)の腱が、指の背側から腹側へスライドしてきてしまい、第一関節を屈曲させることで、スワンネック変形が起きます。
指の背側にある腱が逆の腹側にスライドしてしまうことなんてあるのか、、、という感じですね。
注目したいのは、関節リウマチによってスワンネック変形になってしまうというところではなく、「指の第二関節が炎症によって腫れてしまうことで掌側板がストレッチされ、その状態が続くと掌側板がゆるくなって第二関節が過伸展し、結果として指の背側の腱が腹側にスライドして、スワンネックになる」という、この一連のメカニズムです。
つまり、元をたどるとスワンネック変形の原因は「指の第二関節が炎症で腫れ」ということになります。これは別に関節リウマチにならなくても、突き指などの指の怪我によっても炎症は起こるし、腫れも起きます。
よって、突き指を「すぐ治るだろ」と放置しておいて、第二関節の腫れを放置しておくと、スワンネック変形になる恐れがあります。しっかり応急処置しましょう。
2)掌側板(=volar plate)の断裂
スポーツ中にスワンネック変形が起こるのは、こちらのメカニズムです。ボタン穴変形と同じように、ボールなどが指の先端に当たったり、転んだときに地面に指をついてしまったときなどに、第二関節の掌側板が断裂してしまうことで、スワンネック変形が起きてしまいます。
症状は、第二関節の痛みと腫れ。第二関節の腹側を触ると鋭い痛みが起こることも特徴です。
スポーツ中に起こってしまったときの応急処置としては、まずは「PRICE」。病院にもすぐに行き、医師に診てもらいましょう。上で紹介したボタン穴変形と同じく、副木が必要になります。
まとめ
突き指パート1で紹介したマレットフィンガーやジャージーフィンガーと比べると、あまり見かけない突き指かもしれませんが、トレーナーとしては知っておきたい怪我です。現に、私が見ていたアメフトの現場で起きたので。
珍しい怪我ではありませうが、応急処置は特別なことをするわけではありません。基本に忠実に、焦らず行いましょう。
ただ、指は脂肪や筋肉の量が少ないため、腱の断裂や骨折などが起きやすい部位です。そのため、応急処置をしたら必要があればすぐに病院(整形外科)に行ってドクターに診せましょう。
迅速な処置をしないと、うまく治らなかったり、元に戻るのにかなりの時間が必要になってしまいます。
1度でもしっかり学んで知っておけば、突然現場で見かけてもあたふたすることはないでしょう。トレーナー仲間にもシェアしていただけたら嬉しいです。
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