怪我を評価・診断するプロである整形外科のドクターが、実際に肩の怪我を調べる際に使うスペシャルテストって何か知りたくないですか?
アスレティックトレーナーとして自分が普段使っているスペシャルテストが、実際ドクターは誰も使っていないとなると、ちょっとそのスペシャルテスト自体の正確性が疑われます。
今回の記事では、肩関節のスペシャリストである整形外科医71人にアンケートをとり、肩関節の傷害を見極めるために、どのスペシャルテストがドクターに頻繁に使われているかを調査した論文から、アスレティックトレーナーが知っておくべき肩関節のスペシャルテストを紹介します。
今回は「肩鎖関節」「インピンジメント」「上腕二頭筋」についてです。アスレティックトレーナー向けの記事なので、少し専門用語が含まれています。
【追記:2020/2/11】「関節唇」のスペシャルテストは、別記事に書きました。「SLAP損傷(上方肩関節唇)のスペシャルテスト【トレーナー向け】」もぜひお読みください。
>>参考文献はこちら。
「Frequency of Use of Clinical Shoulder Examination Tests by Experienced Shoulder Surgeons」
肩関節の傷害を見極めるためにどのスペシャルテストが頻繁に使われているのか、肩専門ドクター71人に調査し、まとめた論文です。
「Orthopedic and Athletic Injury Examination Handbook」
大学院のATプログラムで使っていた、スペシャルテストの教科書です。とってもわかりやすい本ですよ。
肩鎖関節損傷のスペシャルテスト
このアンケートをとった71人すべてのドクターが使うと答えた唯一のスペシャルテストが、この肩鎖関節の怪我を見極めるために使われるテスト「Cross-body Adduction test(クロスオーバー内転テスト)」です。
Cross-body Adduction test(クロスオーバー内転テスト)
- トレーナーはテストする肩の方に立ちます。
- 片方の手は患者の肩(肩鎖関節に指を置く)に置いて、動かないようにします。
- もう片方の手は、患者の肘を持って、肩関節は90°屈曲位まで持ち上げます。
- そこから肩を水平内転させていきます。
- 痛みが出たらポジティブ(陽性)です。
痛みの他に、ポキポキッとクリック音のような音が肩鎖関節から聞こえる or 指に感じたり、肩鎖関節が広がるような感覚を感じたら、肩鎖関節の怪我が疑われます。
インピンジメントのスペシャルテスト
インピンジメントを見極めるためのテストとして「Neer Test」と「Hawkins-Kennedy Test」が、50%以上のドクターによって使われているという結果が出ました。
また、今回の参考文献の中で紹介された1つの研究の結果によれば、5つのインピンジメントのスペシャルテスト(上の2つプラス、Painful-Arc test, Empty Can test, External rotation resistance test)を行い、3つ以上のテストで陽性となったら、インピンジメントの疑いが強いと言えるだろう、という結論を出しています。
ここでは、50%以上のドクターが使うと答えた2つのスペシャルテストを紹介します。
1)Neer Test(ニアテスト)
- 患者は肩 • 腕をリラックスさせた状態で立ちます。
- トレーナーはテストをする肩の方に立ちます。
- トレーナーはテストする腕の肘と手首を持ち、内旋させます。
- 内旋を保ちながら、肩関節を屈曲させていきます(患者はずっとリラックス)。
- 痛みが出たら陽性です。
2)Hawkins-Kennedy Test(ホーキンス・ケネディテスト)
- 患者は椅子やテーブルに座るか、もしくは立位。
- トレーナーは、テストする肩側に立つ。
- 患者の腕を持ち、肩関節90°屈曲位まで持ち上げ、さらに肘を90°曲げる。
- 患者はテスト中、常にリラックスした状態。
- 肩関節90°屈曲、肘関節90°屈曲から、肩を内旋(=前腕が下方向に回転)させる。
- 肩の外側に痛みが出たら陽性。
上腕二頭筋損傷のスペシャルテスト
上腕二頭筋の怪我を見極めるために、多くのドクターによって使われていたスペシャルテストは「Speed Test」と「Yergason Test」の2つでした。
1)Speed Test(スピードテスト)
- 患者は座位もしくは立位
- テストを始めるときは、肩関節はニュートラルの位置から。肘は伸ばした状態。
- トレーナーは、片方の手でテストする肩を安定させつつ、指で結節間溝(上腕二頭筋の腱が通る溝)を触れます。
- もう片方の手は患者の手首におきます。
- その状態から、トレーナーは患者の手首に下方向に力を加えます。
- 患者は、その力に抵抗します。
- トレーナーは下方向に力を加えつつ、患者にゆっくりと肩関節の屈曲をさせます。
- 指で触れている結節間溝に痛みが出たら陽性です。
2)Yergason Test(ヤーガソンテスト)
- 患者は立位か座位。
- 肩関節はニュートラル。肘関節は90°屈曲。さらに回内(親指が天井を向く)。
- トレーナーは片方の手で患者の肘を固定し、もう一方の手で手首を持ちます。
- そこからトレーナーは、患者の肩を外旋させながら前腕を回外させていきます。
- 患者は、その回外の力に抵抗します。
- 結節間溝に痛み、もしくはパキパキと音がしたら陽性です。
ヤーガソンテストは、SLAP損傷を見極めるテストとしても有効なスペシャルテストの1つです。
少し動きが複雑なテストなので、アスレティックトレーナーは要練習の覚えておくべきスペシャルテストの1つです。
まとめ
今回は、肩のスペシャルテストその1として、肩鎖関節、インピンジメント、上腕二頭筋の怪我をチェックする際に、肩専門のドクター71人がよく使っているスペシャルテストを紹介しました。
その2では「ローテーターカフ(回旋筋腱板)」の怪我をチェックするスペシャルテストを紹介します。
アスレティックトレーナーや、スポーツ現場で活動するトレーナーの方は、ぜひ動画を見ながら練習してみてください。
【追記:1/14/2016】その2の記事、書きました。「肩のスペシャルテスト その2|ローテーターカフ(回旋筋腱板)編」」もぜひご覧ください。
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