最近は、街中に多くのAEDが置かれるようになってきました。ですが、「誰か人が倒れていたらAEDを使いましょう」と言われても、実際にそのような現場に出くわしたとき、あなたは自信を持って使えると言えるでしょうか?

AEDの使い方は大きく分けて「成人(思春期以降)」「小児(1歳〜思春期)」「乳児(1歳未満)」に分かれます。ですが、難しいことではありません。誰に対してでも、基本的な使い方は同じです。一回でも使い方を聞いたことがある、学んだことがあるだけで、不安はかなり解消されるはずです。

この記事を一度読んでいただければ、いざという時に自信を持ってAEDを使うことができると思います。この「いざというとき」は、誰に起こってもおかしくないですし、いつ起こるかわかりません。周りの人を救えるように、準備しておきましょう。


>>参考文献はこちらです。

  1. BLSプロバイダーマニュアル AHAガイドライン2015 準拠
    アメリカ心臓協会(American Heart Association)による最新の一次救命処置に関するマニュアルです。トレーナーの方にはぜひ読んでいただきたいテキストです。

AEDっていつ使う?なぜ使う?

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AEDとは「Automated External Defibrillator」の頭文字をとったもので、自動体外式除細動器と呼ばれるものです。上の写真のようなものを、街中や病院、駅やショッピングセンターなどで見たことがある人も多いのではないでしょうか?

学生の方や教員の方は、学校のどこにあるか知っていますか?いざという時のために、どこにあるか知っておきましょうね。

このAEDはいつ使うものかと言うと、「心停止が起きたとき」です。よく勘違いされているのは、AEDは「止まった心臓を動かすための装置」ではないということです。

AEDは除細動器と呼ばれる装置であり、「細動を除く装置」なのです。

AEDは心室細動を取り除く装置

心室細動とは、「心臓に起こる小刻みな震え」のことです。「心臓がけいれんする」とも言ったりします。

心臓は普段、一定のリズムで血液をポンプのように全身に送っています。よく「脈が早い」と言ったりしますが、脈が早いというのは、心臓が刻むリズムが早くなっていること。刻むリズムは早くなっても、一定のリズム自体が変わることはありません。

ですが、心室細動が起こって心臓が小刻みに震えてしまうと、この一定のリズムを刻むことができなくなってしまい、心臓が血液を全身に送ることができなくなります。

その結果として、心臓が止まってしまうのです。

AEDを使うことで、この心室細動を取り除くことができます。正確に言うと、異常になった心臓のリズムを、電気ショックを与えることで一回止めてリセットすることができるため、その後胸骨圧迫を行うことで、心臓のリズムを一定に戻すことができるのです。

参考までに、今回の参考文献であるBLSプロバイダーマニュアルには、AEDの説明としてこう書かれています。

自動体外式除細動器は、ショックを必要とする異常な心リズムを特定することができる軽量の携帯型コンピュータ制御装置である。AEDは異常な心リズムをショックによって停止させ、正常なリズムを再開させることができる。

迅速なAEDの使用が救命率を上げる

心停止(心臓が止まってしまうこと)が起こってから、できるだけ早くAEDによるショックを与えることが、救命率の向上に繋がります。

東京都内では、119番をしてから救急車が現場まで到着するのが平均「8〜9分」と言われています。

心停止をしてから何もしないと、1分ごとに救命率は10%下がると言われているため、救急車を待っていては助かる命も助かりません(胸骨圧迫だけでも行うと、1分ごとの救命率の減少は3〜4%まで抑えられます)。

心肺蘇生法とともに、AEDの使い方もしっかりと理解しておくことが、いざという時の迅速な行動に繋がります。

心肺蘇生法(CPR)のやり方は「心肺蘇生法の手順を1から徹底解説!大切な人を救えるように」で詳しく解説しています。ぜひこちらの記事もお読みください。

AEDの使い方|手順を1から解説

それでは、心停止となってしまった人を救うためのAEDの使い方を詳しく解説していきます。

まずは、日本赤十字社が作成した、一次救命処置(心肺蘇生法+AED)の動画をご覧いただけたらと思います。動画を見てから以下の記事による解説を読んでいただくと、より理解が深まるかと思います。

(「AEDの使い方」は、7’17くらいから始まります)

それでは、手順を1つ1つ詳しく解説していきます。

1)すぐにAEDを持ってくる

一刻も早くAEDを使うために、一刻も早くAEDを持って来る必要があります。

AEDは「駅」「空港」「医療施設(病院・クリニックなど)」「学校」「公共の建物(市役所・区民会館・公民館など)」「スポーツ・フィットネス施設」「商業ビル」「オフィス」「ショッピングモール」などにはほぼ必ずと言っていいほど置いてあります。

もしAEDが必要な事態に遭遇したら、これらの建物を見つけて、AEDを見つけて現場に持っていきましょう。

また、「日本全国AEDマップ」というサイトがあり、アプリもあります(App Store, androidともにあります)。

開くと下左のような画面になるので、「OK」を押すとGPSが作動して、今自分がいる位置を特定し、その周りにあるAEDの位置を示してくれます。アプリは無料なので、ぜひ万が一の時のために、ダウンロードしておいていただけたらと思います。

2)ケースを開けて電源を入れる

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ケースを開けたら自動的に電源が入るタイプのAEDと、電源ボタンがあって押すと電源が入るタイプのAEDがあります。持ってきたAEDがどちらのタイプかわからないため、まずは電源ボタンを探しましょう。

もし自動的に電源が入るタイプであれば、ケースを開けたら喋り出すと思います。喋り出さなければ、電源ボタンは装置の真ん中に目立つところにあるはずなので、ケースを開けたらすぐに押しましょう(上写真だと緑のボタンが電源ボタンです)。

AEDのケースを開けたり、パッドを身体に貼るといった操作は、傷病者を挟んで、胸骨圧迫(=CPR)をしている人の反対側で行いましょう。反対側で行うことで、胸骨圧迫や人工呼吸の邪魔になりません。

3)AEDの指示に従う

電源が入ったら、あとはAEDが喋る指示に従って行動しましょう。AEDは使い方を覚えていなくても、指示通りに動けば誰でも正しく使うことができます。

4)傷病者の胸をはだけてAEDパッドを貼る

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AEDのケースを開けると、AED本体の他に、ケーブルとパッドが入っています。まずは電気を流すパッドを胸に貼りましょう。

袋から2つのパッドを取り出し、粘着面のシールをはがします。パッドの粘着はとても強力なので、シールをはがしたらすぐに傷病者の体に貼ります。

貼る位置は基本的に、1つは「傷病者の右鎖骨の下」に貼り、もう1つは「傷病者の左わきから7〜8cm下」に貼ります。パッドが入っている袋にイラストで示されているので、落ち着いて貼りましょう。

AEDパッドを2つとも貼り終えたら、ケーブルをAED装置につなげます。

もし救助者が2人以上いる場合は、1人がAEDの準備をしている間や、AEDパッドを体に貼っている間も、もう1人は胸骨圧迫(+人工呼吸)はできる限り続けましょう。胸骨圧迫はできる限り続けることが、救命率の向上に繋がります。

AEDパッドを貼る前に確認すべきこと

以下のような状況に当てはまる場合は、そのままAEDパッドを貼ってしまうと、うまくAEDが機能しないことがあります。

【1】胸毛が濃い

AEDパッドを貼るために傷病者の上半身を露出させた際、人によっては胸毛が濃い場合があります。胸毛の上からAEDパッドを貼ってしまうと、その毛によってAEDパッドが身体から浮いてしまい、電気ショックがうまく心臓に伝わりません

しっかりと胸の皮膚にAEDが貼られていないと、AEDによって「電極を確認してください」や「電極パッドを確認してください」と指示されます。よって、もし胸毛が濃い場合は、パッドを貼る前に毛を剃りましょう。AEDキットの中に「カミソリ」が備えられているはずです。

もしカミソリがない場合は、予備のパッドを使って毛を抜きます。一回予備パッドを胸に貼り、勢いよくパッドをはがして胸毛を抜きます。そして露出された肌のところに新しいパッドを貼りましょう。

【2】汗を大量にかいている・水が付いている

胸毛と同じく、水・汗のついた肌にAEDパッドを貼ってしまうと、しっかりと電気が心臓に流れずに、皮膚表面に付いている水に電気が流れてしまいます。

よってまず大前提として、水の中でAEDは使えません。水中で溺れた人にAEDを使う場合は、水から出してから使いましょう。

身体が水や汗で濡れている場合は、ハンカチやタオルなどで拭き取ってからAEDパッドを貼ります。身体の一部が水に浸かっている(水たまりの上に傷病者が寝ている、雪の上に寝ているなど)くらいであればそのままで大丈夫です。

AEDパッドと胸・脇の下の間に水がなければ全く問題はありません

5)傷病者から離れて、AEDによる心リズムの解析

AEDによって「傷病者から離れてください」と言われたら、指示に従って胸骨圧迫をやめて離れましょう。AEDが傷病者の心臓のリズムの解析を始めて、ショックが必要かどうかをチェックしてくれます。

これは先日受けた一次救命講習で教えてもらったのですが、AEDによる解析中に傷病者に触ってしまうと、解析がうまくいかずに正確な解析ができなくなってしまうようです。胸骨圧迫をしていた人、人工呼吸をしていた人は、傷病者から離れましょう。

6)ショックが必要なら傷病者から全員離れる

AEDによる解析が終わると、「ショックが必要です」か「ショックの必要はありません」のどちらかのメッセージが流れます。もしショックが必要と言われたら、改めて傷病者の身体に誰も触っていないことを確認しましょう。

ショックボタンを押す前にもう一度誰も傷病者に触っていないことを確認してから、ボタンを押します。ショックが加わると、一瞬傷病者の身体が動きます(=筋肉が収縮します)。

ショックが終わったら、もしくは「ショックの必要はありません」と言われたら、すぐに胸骨圧迫(+人工呼吸)を開始しましょう。

上記していますが、AEDによってショックを与えても心臓が動くわけではありません。胸骨圧迫(=CPR)をしてはじめて心臓は動き始めます

参考文献には、AEDが傷病者のもとに届いてから「30秒以内」にショックを与える(もしくは解析をしてショックが必要ないことを確認する)のが目標である、とあります。

7)2分ごとにAEDの解析が行われる

ショックを与えようが、ショックの必要がないと言われようが、すぐにCPR(=胸骨圧迫+人工呼吸)を開始します。その時、AEDパッドは貼ったままにしておき、AEDの電源も入れたままにしておきます。

電気ショックが成功して除細動ができたとしても、再び心室細動が起きてしまう事があり、またAEDによる電気ショックが必要になることがあります。

約2分ほどCPRを行なっていると、再びAEDが解析を開始します。AEDから「傷病者から離れてください」というメッセージが流れたら、指示通り離れましょう。ショックが必要と言われれば、ショックボタンを押します。

これを、救急隊が来るまで繰り返します。

トレーナーとして活動されている方で遠征をする事が多い方や、練習場所の近くにAEDがない場合は、ポータブルAEDの購入を考えましょう。AEDの使用は早ければ早いほど救命率が上がり、逆に遅ければ遅いほど救命率は下がります。私がアメリカでトレーナー活動をしていた時は、どこに行くにもAEDを持って行っていました。トレーナーとして、備えることのできるものはしっかりと備えておきましょう。

子供(小児・乳児)へのAEDの使い方

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AEDを使う相手が子供であっても、基本的に使い方は変わりません。上で紹介したステップで、同じように行いましょう。

AEDによっては、小児用のAEDパッド(小さめのパッド)が入っていることもあります。もし8歳未満くらい(見た目でわかれば)の子供に対してAEDを使う際は、もし持ってきたAEDに小児用AEDパッドが入っている場合は、そちらを使いましょう。

貼る場所は基本的には大人と変わりません(パッドの袋、もしくはパッド自体にイラストで貼る場所を示してくれているので、その通りに貼りましょう)。

もし(この子は8歳未満かな?もっと大きいかな?)と言う場合は、大人用のパッドを使っても全く問題ありません。

1つ注意すべきことは「AEDパッド同士がくっつかないこと」です。パッドがしっかり皮膚についていないと、電気は適切に流れません。

もし「右鎖骨の下」と「左わきの数cm下」に貼るとAEDパッド同士が触れてしまうという場合は、「胸の前」と「背中」にパッドを貼って心臓を前後で挟み込むようにします。この貼り方でもしっかり心臓に電気ショックを与えることができます。

1歳以下の乳児であっても、使い方は変わりません。体が小さいため、小児用のAEDパッドを使うことが望ましいですが、もしなければ大人用のパッドを使いましょう。

ショックが強すぎて逆に危なそう、と感じるかもしれませんが、問題ありません(ショックを与えないよりはずっと救命率が上がります)。うまくパッド同士が重ならないように貼ることだけ注意してください。

大人用のAEDパッドを小児や乳児に使うことは全く問題ないですが、逆に小児用を大人に使うのはダメです。ショック量が少なすぎるため、しっかりと心室細動を取り除くことができません。

まとめ

AEDの使い方を順番に解説しました。基本的にはAEDから流れるメッセージを聞いて、その通りに行えば大丈夫です。

特に運動指導者の方、トレーナーの方、学校の教職員の方などは、ぜひ日本赤十字社の講習会などを受けて、実際に胸骨圧迫、人工呼吸、AEDの使い方を実技を通して練習していただけたらと思います。私は日本ACSL協会主催の講習会を2年に一度受けています。

いざという時に自信を持って動けるように、そして命を救う事ができるように、準備しておきましょう。

今回の参考文献である「BLSプロバイダーマニュアル AHAガイドライン2015 準拠」は、本当におすすめの本です。少し値段は高めですが、エビデンスに基づいた最新のガイドラインが細かく記載されています。学校・チームに一冊持っておき、読んでいただいたり、勉強会の時間をとるなどすると良いと思います。

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