「バランスの良い食事」と聞いて、どんな食事かパッと思い浮かびますか?ご飯があって、お味噌汁があって、主食があって、副菜があって、といった感じが思い浮かんだでしょうか?これは、「一食」あたりのバランスの良さを考えたものになります。ですが私たちは、1日を通しての食事のバランスを考える必要があります。
今回は、バランスの良い食事について、1日に必要なエネルギー摂取量と栄養素に注目して解説していきます。あなたが1日元気に活動するために必要なエネルギーをしっかり摂取することと、健康的な生活を送るために必要な栄養素をしっかりと摂れる食事をすることが、バランスの良い食事ですよ。
>>今回の参考資料はこちら。
「日本体育協会:スポーツと栄養」
日本体育協会から出ている教科書より。
「日本人の食事摂取基準 (2010年版)」
厚生労働省が、国民の健康の維持・増進や障害予防を目的に制定した食事摂取の基準です。
食事のバランス|チェックすべき2つの要素
「バランスの良い食事」とは、一食のみのことを考えることではありません。1日を通して食事のバランスを考えることで、1日元気に活動でき、毎日健康的な生活を送ることができます。
食事のバランスをチェックする上で、最低限以下の2つの要素は満たすようにしましょう。
1)1日の活動に必要なエネルギーを摂取する
みなさんは、自分が1日の活動に必要なエネルギーの量ってどれくらいか知っていますか?エネルギーは「カロリー」とも呼ばれます。カロリーという言葉のほうがよく耳にしますかね。
人は「食べること」によってエネルギー(=カロリー)を摂取します。そのエネルギーを使って、勉強したり、運動をしたり、家事をしたり、買い物に行ったりします。体内からエネルギーがなくなってしまうと、人は疲れて動けなくなってしまいます。車からガソリンがなくなってしまうようなものです。運動をする人は、パフォーマンスが低下したり、集中力が低下してケガをしやすくなったりします。
性別・年齢・活動量によって1日に必要なエネルギー量は変わってきます。参考として、日本人の食事摂取基準2010より「推定エネルギー必要量」を表にしてみました。
この「推定エネルギー必要量」は、平均的な体格で普通の生活をしている人が1日で必要なエネルギー量を表したものです。
推定エネルギー必要量は体格によっても変わってきます。ガッチリしていれば必要なエネルギー量は増え、やせている人は減ります。更に身体活動レベルによっても変わってきます。それでは「普通の生活」とはどんなものか。同じく「日本人の食事摂取基準2010」にはこうあります。
座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買い物・家事・軽いスポーツ等のいずれかを含む場合
もしこの定義よりも身体活動レベルが高いなって思う人は、上の表の推定エネルギー量よりも男性は約300kcal、女性は約200kcalプラスで多く摂るべきです(低い場合は逆にマイナスする)。
中学校・高校・大学で運動部やクラブスポーツに入っていてかなり激しい運動をしている人は、更にもっとエネルギーを摂取する必要があります。
より詳しく自分が1日に必要なエネルギー量を知りたい方は、ぜひ「推定エネルギー必要量を求めて一日に必要なエネルギー量を計算!」の記事を読んで、計算してみてください。
2)1日に必要な各栄養素を摂取する
これも身体活動レベルによって変わってきますが、あくまで参考として。今回は三大栄養素の炭水化物・たんぱく質・脂質の摂取目標量を紹介します。
- 炭水化物:総エネルギーの50〜70%(炭水化物1gで4kcal)
- たんぱく質:総エネルギーの15〜20%→体重1kgあたり1gが目安(タンパク質1gで4kcal)
- 脂質:総エネルギーの20〜30%(脂質1gで9kcal)
ちょっとみればわかるかもしれませんが、すべてを上限の%で考えてしまうと100%を超えてしまいます (70%+20%+30%=120%)。なので、上に示した範囲の中で、自分に必要なエネルギー量と照らし合わせて、すべてが範囲内でおさまるようにうまく考えてみてください。
考え方の例がこちら。
(例)17歳男性, 体重60kg
まず、1日の推定エネルギー必要量を上の表でみてみると2750kcalですね。この2750kcalを、炭水化物・たんぱく質・脂質で摂っていくことになります。
最初にたんぱく質から考えてみましょう。たんぱく質は、最低でも体重1kgあたり1gを摂ることが目安なので、この人は1日に少なくても60g(=240kcal)は摂る必要があります。そして240kcalは、この人の1日に必要な2750kcalの約9%なので、もう少したんぱく質をとる必要がありますね。
たんぱく質を15%に設定すると、2750kcalの15%は約410kcal。たんぱく質1gが4kcalなので、1日にたんぱく質を100gくらい摂る必要があります。
次に脂質。ここでは20%に設定しましょうか。2750kcalの20%は550kcal。脂質1gは9kcalなので、550÷9=61.1となり、1日に脂質61gくらいとりましょう、ということになります。
ここまでで、たんぱく質から410kcal、脂質から550kcalをとるべきということがわかりました。では1日に必要なエネルギー2750kcalを摂取するには、どれくらい炭水化物を摂ればいいのでしょう。
2750 − (410+550)=1790
炭水化物は1gで4kcalなので、1790÷ 4=447.5となり、1日に炭水化物をだいたい447g摂ると、1日に必要なエネルギーを3大栄養素でバランスよくとることができます。ちなみにこの1790kcalは、パーセンテージにすると2750kcalの65%。しっかり上で示した範囲でおさまっていますね。
推定エネルギー必要量と同じく、激しい運動をする人は各栄養素の必要量も変わってきます。また、瞬発系競技のアスリートと持久系競技のアスリートでは、摂るべき栄養素のバランスが変わってきます。アスリート向けの各栄養素の必要量は、また今度詳しく紹介します。
一食の食事のバランス基本形をチェック
以上を満たす食事を摂るために、どれくらいの品数を用意すればいいのか?何を食べればいいのか?参考文献に「アスリートの食事の基本形」が紹介されていました。上の写真のような感じです。食事をするときは、こんなイメージで食べるモノ・品数を考えてみましょう。
1)主菜
主食は、ご飯・麺類・パンなどの、エネルギー源となる炭水化物をとるモノになります。激しい運動をする人は、その分エネルギー源もたくさんとる必要があるので、この主食の量も増やす必要があります。朝・昼・夜の食事で充分な炭水化物を摂取できない場合は、間食でおにぎりやパン、スナックなどを補給して、しっかりと1日に必要なエネルギー量をとりましょう。
2)主菜
主菜は、肉・魚・卵・大豆製品などの、たんぱく質をしっかり補給できるモノになります。体格が大きいアスリートはそれだけ摂るべきたんぱく質の量も多いため、品数を増やす必要があります。この主菜(特に肉や魚)は、脂肪も多くなりがちなので、食材の種類や調理法を工夫したいですね。脂質の摂り過ぎに注意しましょう。
3)副菜
副菜は、野菜・海藻・きのこ・芋類などを使った品で、ビタミン・ミネラルや食物繊維を補給できるモノ。一食の中でよく不足するのが緑黄色野菜なので、副菜で緑黄色野菜を意識してとることを心がけるといいと思います。副菜は必要に応じて品数を増やしましょう。
4)汁物
汁物は、副菜と同じように基本的にはビタミンやミネラルを補給するモノ。ですが、肉や豆腐を入れることでたんぱく質も補給できるし、ジャガイモを入れれば炭水化物も摂取でき、様々な種類の栄養素を補給しやすい品です。夏バテなどで食欲がないときは、いろんな食材を使った汁物をつくることで、一気に多くの栄養をとることができますね。
5)乳製品・果物(フルーツ)
①〜④の他に、牛乳や乳製品・果物も加えると、栄養のバランスがとてもよくなります。食事と一緒でなくても、食後のデザートとして果物をとったり、間食でヨーグルトやチーズを食べてもよいでしょう。
まとめ
「バランスのよい食事」がどんなものか、1日に何をどれくらい食べたらいいのか、少しはイメージできましたか? いくらトレーニングをしても、激しい運動をしても、栄養をしっかり摂らなければ筋肉はつかないし、ただただ疲れてしまいます。
バランスよく食べて、1日元気に活動できる身体をつくりましょう。
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