あなたは「カフェイン」をただの眠気覚ましの成分だと思っていませんか?
実はカフェインは、適切な摂取量であれば、科学的にも証明された、安全に運動パフォーマンスをアップさせてくれるすごい成分なのです。
本記事では、信頼できるエビデンスと、エビデンスを元に書かれた信頼できる本を参考に、カフェインの摂取による運動パフォーマンスアップの効果について解説していきます。
カフェインの摂取によってどんな運動能力が上がるのか?そのカフェインの効果を得るための摂取量やベストな摂取タイミングは?
カフェインの効果を最大限に引き出すための摂取法をお伝えします。
>>今回の参考資料はこちらです。
「ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations」
国際栄養スポーツ学会が2018年にアップデートして発表した「運動&スポーツ栄養」に関するレビューです。参考文献は脅威の738個です。
「Effect of Caffeine on Sport-Specific Endurance Performance: A Systematic Review」
スポーツでの持久系パフォーマンスにおけるカフェインの効果を示したシステマティックレビューです。
「科学的に正しい筋トレ 最強の教科書」
理学療法士でありトレーナーでもある庵野拓将さんの本です。最新のエビデンスをベースに書かれており、かなり勉強になります。
「ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45」
莫大なエビデンスを読んで様々なヘルスケア情報を発信している鈴木祐さんの本です。鈴木祐さんの本はどれも面白く、いつも勉強させてもらっています。
「最高のパフォーマンスを実現する超健康法」
メンタリストDaigoによる健康本です。内容盛りだくさんで「朝」「昼」「夜」「週末」などに分けて、健康に関するあらゆる疑問に答えています。読み応えあります。
カフェインは「運動能力促進に明らかに安全で効果あり」と証明済
国際栄養スポーツ学会が発表したレビューでは、カフェインは「運動パフォーマンスを促進するもの」として「明らかに安全で効果のあるもの」とし、エビデンスレベルは「A=強力なエビデンスがある」と示しました。エビデンスレベルはAが最高ランクです。
私達がコーヒーや紅茶、緑茶やチョコレートなどを摂取することによって得られる「カフェイン」は、適切な量の摂取であれば、身体にとって明らかに安全な成分であり、しかも私達の運動能力をアップしてくれるということが、エビデンスによって世界的に証明されています。
カフェインでパフォーマンスアップが起こる3つのメカニズム
カフェインの摂取によって以下3つのメカニズムが脳・身体で働くことにより、運動パフォーマンスがアップすると言われています。
- 脂肪細胞から脂肪酸を分解して血中に放出
- アデノシン受容体の働きを鈍くさせる
- ドーパミン・アドレナリンの放出
- 筋肉内のカルシウムイオン増加
ちょっと難しいですが、トレーナーやコーチの方はぜひ知っておきたいカフェインの効果です。
カフェインの効果でアップする運動能力
カフェインは私達の「パフォーマンス(=運動能力)」を促進してくれるということはわかりました。では実際に、どのようなパフォーマンスがカフェイン摂取によってアップするのでしょうか?
カフェイン摂取によってアップする能力は以下の通りです。
1)持久系運動のパフォーマンスアップ
持久系運動パフォーマンス(マラソンなど)におけるカフェインの効果を示したシステマティックレビューによると、「体重1kgあたり約6mg」のカフェインを「約60分前」に摂取することで持久系運動の能力がアップする、と示されています。
カフェインが持久系運動パフォーマンスをアップさせるメカニズムは、まず1つは「脂肪をエネルギーとして効率よく利用できるようになる」ことです。
カフェインの摂取効果で、脂肪細胞から脂肪酸を分解して血中に放出してくれるため、その脂肪酸を持久系運動でエネルギーとして効率よく使えるようになります。
結果、体内に蓄えられている糖質(グリコーゲン)の使用をセーブすることができるようになるため、より長い時間運動ができるようになる、というメカニズムですね。
また「アデノシン受容体の反応を鈍くさせる」というメカニズムも、持久系運動パフォーマンス向上に一役買います。
長時間の持久系運動(有酸素運動)をやり続けていると疲れてきますよね? すると「アデノシン」という物質が脳に分泌されます。
そのアデノシンが「アデノシン受容体」によって受け取られると、「痛み」や「疲れ」を実際に脳が感じ、「もうこれ以上その運動はやめろ!」という信号を出すため、運動パフォーマンスは低下していきます。
しかしカフェインを摂取すると、アデノシンがくっつくはずのアデノシン受容体に、カフェインがくっつきます(カフェインとアデノシンは構造が似ているらしい)。
カフェインを受け取ってしまったアデノシン受容体は、運動中にアデノシンが脳に分泌されてもそのアデノシンを受け取ることができないため、結果「痛み」や「疲れ」の信号を受け取れなくなります。
運動中にパフォーマンスが低下してくる要因の1つは「脳が痛みや疲れを感じ、これ以上動き続けたらまずい!と判断して身体にストップをかける」ことなので、アデノシン受容体がアデノシンを受け取れなくなることで、脳が痛みや疲れを感じづらくなり、結果として運動パフォーマンスをより長い時間維持させることができるようになります。
2)無酸素系運動のパフォーマンスアップ
カフェインの摂取によって持久系の運動パフォーマンスがアップすることは、非常に多くの研究によって証明されていますが、無酸素系運動(筋トレ・短距離ダッシュなど)については、結果が分かれています。
まとめると、おそらく無酸素系のパフォーマンスもカフェインの摂取によって向上するだろう、というのが今のところの結論になります。
カフェインによって筋力アップが起こる理由として言われているメカニズムは2つ。
- 脳に「ドーパミン」や「アドレナリン」が放出されることを促進する
- 筋肉内にカルシウムイオンを増やす
ドーパミンは脳の「報酬系」と呼ばれる領域が司る、別名「快楽ホルモン」です。アドレナリンは別名「闘争ホルモン」と呼ばれ、ドーパミンやアドレナリンが出ることで、集中力ややる気がアップします。
これらのホルモンがカフェイン摂取によって放出されることで、筋力を発揮する際のエネルギーが素早く作られるようになる、と考えられます。
摂取量・タイミングについては、参考資料や研究結果をもとに考えると、「筋トレを始める30〜60分前」に「体重1kgあたり3〜6mg」のカフェインを摂取することで、筋トレの効果が高まる、と示しています。
3)疲労感が和らぐ・筋肉痛が和らぐ
カフェインの摂取によってアデノシン受容体の反応が鈍くなり、痛みや疲れを感じにくくなるとお伝えしました。鈴木祐さんの「ヤバい集中力」にはこうあります。
150〜200mgのカフェインを飲むと、約30分で疲労感がやわらぎ、注意力の持続時間が向上する
「疲労感の低下」は多くの研究によって示されていますが、いくつかの研究では、同じ「アドノシン受容体の反応が鈍くなる」というメカニズムで「筋肉痛も和らぐ」と示されています。
下で「カフェインの量」についてまとめているので見ていただきたいですが、カップ一杯のコーヒーでカフェインは「100mg」摂取できます。
缶コーヒー1本がだいたい180〜200mlなので、カフェインは120mgくらい。小さいペットボトルで280mlなので、これくらい飲むとカフェインは180mgくらいは摂取できます。
「コーヒーナップ」で午後の仕事パフォーマンスアップ
メンタリストDaiGoさんがおすすめするのが、カフェインの覚醒作用を使った「コーヒーナップ」です。
多くの睡眠本で推奨されている「パワーナップ(15〜20分間の昼寝)」の効果を、カフェインの覚醒作用もプラスするのがコーヒーナップです。疲労感の回復や集中力アップによって、起きた後の仕事のパフォーマンスアップが期待できます。
カフェインの効果が実際脳・身体に現れるのは、摂取から約30分後(早くて15分後。個人差あり)です。
仕事中に昼寝ができる環境にいる方は、ぜひ昼寝前にカフェインを150〜200mgほど摂取してから、15〜20分パワーナップしてみてください。起きた後のスッキリ感が感じられると思います。
カフェインの摂りすぎは逆に疲労感を招く
適量のカフェイン摂取は疲労感を和らげてくれますが、摂取量が増えると逆に疲れてしまいます。
カフェインの摂取によってアデノシン受容体の反応が鈍くなるのですが、カフェインの摂取量が増えていくと、次第にアデノシン受容体自体の数を脳は増やし始めます。
受容体自体の数が増えることで、今度はカフェインに敏感になりすぎて、逆に疲れが溜まってしまうようです。花粉症のような、カラダに害のないものに過剰な免疫反応が起きてしまうアレルギーと同じ感じですかね。
鈴木祐さんの「ヤバい集中力」には、多くの研究でカフェインを一度に「400mg以上」摂取すると副作用が出てくる、とあります(下記でカフェインの過剰摂取の副作用について詳しく書いてます)。
4)脂肪燃焼・ダイエット効果
Daigoさんの本にはこんな記述があります。
カフェインは、現代の科学で唯一「ダイエットにある程度効くのではないか」と研究で証明されている物質の1つです。
実際に国際栄養スポーツ学会のレビューには、カフェインの摂取によって、運動によるエネルギー消費を増加させる効果があり、結果減量を促進する、と示しています。
カフェインの摂取による脂肪燃焼効果は「脂肪細胞から脂肪酸を分解して血中に放出する」という作用がメインです。
つかり、カフェインを摂取することで脂肪が効率的に分解され、血中に放出されたところで運動をすると、その脂肪酸がエネルギーとして使われて消費するため、脂肪燃焼=減量となります。「運動」をすることが大切です。
逆に、カフェインがせっかく脂肪酸を分解してエネルギーとして使える状態にしてくれても、運動をしてその脂肪酸をエネルギーとして使わなければ、また体脂肪に戻ってしまいます。
運動しなくてもカフェイン摂取のみで痩せられる!?
とは言いつつも、カフェインがすごいところは、運動によるエネルギー消費を増やすだけではなく、安静時代謝(=基礎代謝+食事誘導性熱産生)の量も増やすという研究も数多くあるというところ。
ちょっと古いですが、1995年のカフェインとエネルギー代謝の研究*によれば、痩せている女性でも肥満の女性でも、カフェインを摂取することで、運動をせずとも10〜30%ほどの体脂肪が減った、と示しています。
じゃあカフェインをとるだけでも痩せるんだ!とは、まぁ言えるといえば言えるのですが、やはり運動と組み合わせるほうが脂肪燃焼効果は格段にアップします。
様々な飲料に含まれるカフェインの量
ここまで「体重1kgあたり◯mg」や「△△△mg」のカフェインを摂取すると、、、といった表記が出てきましたが、実際に私達がカフェインを摂取できる食べ物や飲み物に、どれくらいの量のカフェインが含まれているか、というのははっきりわからない人が多いと思います。
以下、みなさんがよく口にするであろうものをいくつか例に挙げてみました(おおよそです。商品によって多少カフェインの量は異なります。表示は100mLあたりのカフェイン量です)。
- コーヒー:60mg
- 栄養ドリンク(リポビタンD・ユンケルなど):50mg
- レッドブル・抹茶:32mg
- 紅茶・ココア:30mg
- ウーロン茶・ほうじ茶・煎茶:20mg
- 緑茶:20mg
- コーラ:10mg
参考にしていただけたらと思います。
カフェインの過剰摂取は副作用あり
多くの研究によって、一度にカフェインを300mg以上摂ると、カフェインによるメリットは薄れていくとされています。
また、上記した「逆に疲労感がアップする」に加えて、一度に400mg以上のカフェインの摂取(もしくは体重1kgあたり10mg以上の摂取)は、「不安になる」「焦り・苛立ち」「頭痛」「血圧の上昇」「不眠」などの副作用が出ると言われています。
個人によってカフェインの感受性が違うので、400mg以下の摂取でも副作用が出てくる人はいます。鈴木祐さんは「一度に缶コーヒーを2本飲むのは推奨しない」としています。
カフェインを摂取し続けると運動能力アップ効果は低くなる
よく「いつもコーヒー飲んでるから、俺カフェイン効かないのよ」「カフェイン摂っても私寝れるの〜」といった人がいますね。これ、その通りなんです。
ここまでカフェイン摂取による運動パフォーマンスアップの効果を解説してきましたが、毎日のようにカフェインを摂取していると、カフェインに耐性がつくため、その効果は低下していきます。
よってカフェインによる運動パフォーマンスアップの効果をしっかり発揮したい場合は、その数日前からはカフェイン摂取を控えると良いですね。
ただ、もし普段あなたが毎日のようにカフェインを摂取している場合、多少「依存症」のようになっている可能性があり、カフェインを全く摂らないと、最初の数日は「一日中眠い」とか「頭痛」や「不安」といった症状が出る可能性があります。
実際に僕も毎日コップ2〜3杯はコーヒーを飲むのですが、たまに、朝から仕事等でコーヒーを飲むタイミングがなくて夕方になったりすると、軽い頭痛を感じたりすることがあります。
いつか一度、1〜2週間位カフェインを断つ生活をしてリセットしたいなと思っていますが、同じように考えている方は、最初の数日は仕事に影響が出る可能性があるので、タイミングを考えて行うと良いと思います。
まとめ
様々な運動パフォーマンスをアップさせるためのカフェインの摂取量とタイミングをまとめます。
- カフェインによってアップする運動能力は「持久系運動パフォーマンス」「無酸素系運動パフォーマンス」「疲労感を和らげる」「脂肪燃焼」
- カフェイン摂取量は1日で「体重1kgあたり3〜6mg(〜9mgまでなら効果アップを見込めるが、カフェインに弱い人は注意)」
- カフェイン摂取のタイミングは「運動前30〜60分前」(個人差あり)
- 「一度に300mg以上」の摂取はあまり意味無し(400mg以上で副作用あり)
真剣に運動・スポーツをしている方や、効率的に脂肪を減らしたいという方にとっては、摂取量さえ増やし過ぎなければ、安全で効果の高い成分です。
ぜひうまく活用していただけたらと思います。
Comments are closed.