コーヒーや紅茶、緑茶やコーラ、エナジードリンクなど、カフェインを含む飲み物はたくさんありますが、これらを飲むと「おしっこに行きたくなる」「トイレが近くなる」という方は多いと思います。

これはカフェインによる「利尿作用」の効果です。カフェインを摂取することで、尿によって身体から余分な水分や塩分を排出する作用が促進されます。

運動・スポーツの世界でよく言われるのが、コーヒーのようなカフェインを含む飲み物を飲むと、利尿作用によって水分が体外にどんどん出ていくため水分補給の効果はなく、むしろ脱水を促進してしまうということ。

ですが、これは研究によって「カフェインの摂取は脱水を引き起こさない」「コーヒーは水分補給にちゃんとなる」ということがはっきりと示されています。

カフェインはうまく使うと運動能力をアップさせてくれる成分です(詳しくは「カフェイン摂取で運動能力がアップする【科学的に証明済】」の記事で)。

もちろん過剰な摂取は、脱水も含めたネガティブな効果が出てきますので、本記事を読んでぜひカフェインをうまく使えるようになってください。


>>今回の参考文献・資料はこちらです。

  1. Caffeine and diuresis during rest and exercise: A meta-analysis
    運動中や安静時におけるカフェインと利尿作用の関係についてのメタアナリシスです。
  2. No Evidence of Dehydration with Moderate Daily Coffee Intake: A Counterbalanced Cross-Over Study in a Free-Living Population
    毎日コーヒーを飲んで脱水になるというエビデンスはありません、という研究です。
  3. Spilling the Beans: How Much Caffeine is Too Much?
    アメリカ食品医薬品局(The U.S. Food and Drug Administration)による、カフェインの摂取についての記事です。
  4. No, Coffee and Tea Aren’t Actually Dehydrating. Here’s Why
    Timeの記事です。有名なアメリカのニュース雑誌です。

コーヒーは水分補給にちゃんとなる

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Zhangらによるメタアナリシス1では「健康的な大人であれば、カフェインの摂取によって過度な脱水が起こることはない」とはっきり示しています。

カフェインを含む飲み物(例えばコーヒー)は、飲めばしっかりと水分補給になります。なぜなら、当たり前ですが「コーヒーは水分だから」です。

カフェインの利尿作用によって、コーヒーを飲むとおしっこに行きたくなるのは事実です。ですが、コーヒーを飲むことで摂取するのはカフェインだけではなく、水分も摂取しています。

コーヒーを飲んでカフェインを摂取し、それによって起こる利尿作用によって体外に出ていく水分よりも、コーヒーを飲んで摂取した水分の量の方が多いので、しっかり水分補給になります。

UCLA(University of California, Los Angeles)医学部のDavid Geffen教授は「カフェインを含む飲み物を摂取すると、体が吸収すべき水分はしっかり補給され、あくまで残りの不必要な水分と塩分が利尿作用によってサッと排出される」と示しています4

1日◯リットルは水分補給をする、という決めている人は、カフェインを含む飲み物で摂取した水分もカウントにいれて、まったく問題ありません。

運動前にコーヒーを飲んでも運動中の水分状態に問題なし

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コーヒーのようなカフェインを含む飲料を摂取することで、きちんと水分は体に補給される、とここまで解説してきましたが、「これから運動をする人」や「仕事でたくさん動く人」でも、カフェインの摂取で利尿作用が促進されるということはない、と結論づけています。

以前「カフェイン摂取で運動能力がアップする【科学的に証明済】」の記事で、カフェインによる運動パフォーマンスアップの効果について解説しましたが、過剰な量のカフェインを摂取しない限り、運動能力にも身体の水分状態にもマイナスな影響は与えない、ということがわかりました。

運動中はカフェインの利尿作用が働かなくなる

少し専門的な話になります。

「運動」は「交感神経」を優位にします。交感神経が優位になると、交感神経に支配されている「副腎」が刺激され、「アドレナリン(興奮したり強いストレスを感じると分泌されるホルモン)」が出ます。

この「交感神経が優位になって、副腎からアドレナリンが出る」というプロセスは「抗利尿作用(=利尿作用の逆で、おしっこが出にくくなる)」を働かせることになります。

カテコールアミン(アドレナリンを含む、副腎から分泌されるホルモンの総称)が分泌されると、腎動脈が収縮します。

腎臓はご存知の通り、体内でいらなくなった老廃物を「尿(おしっこ)」として体外に排出する働きがありますが、腎動脈が収縮すると、腎臓にいく血液が少なくなり、腎臓の働きがゆっくりになるため、結果として、運動中はあまりおしっこをしなくなります。

まとめると、運動をして交感神経が優位になると、交感神経に支配されている副腎からカテコールアミン(アドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンといった「興奮・攻撃ホルモン」)が分泌され、このホルモンによって腎動脈が収縮し、腎臓でおしっこによって体外に老廃物を排出するという働きが鈍くなる、という一連のプロセスが起こります。

このプロセスが起きるため、適量のカフェインの摂取であれば、運動前にコーヒーを飲んだからといって、運動中に利尿作用が働いて脱水が進んでしまう、ということは起こらない、とされています。

運動の強度・時間・高気温はカフェインの利尿作用を抑制する

Zhangらによるメタアナリシス1では、運動の強度が高ければ高いほど、また運動時間が長ければ長いほど、カフェインによる利尿作用は働かなくなる、とも示されています。

更に「気温の高さ」による身体への熱の負荷も、交感神経を優位にして副腎からのカテコールアミンの分泌を促進する作用があります。

よって、暑い環境での運動や労働もおしっこの排出が抑制されるため、カフェインの摂取による利尿作用によって身体が脱水状態になることはない、とされています。

ただこれはあくまで「カフェインによる利尿作用」は気にしなくて良いということ。暑熱環境下での運動・労働ではもちろん「汗」によって大量に水分が体外に出ていくため、積極的に水分補給をする必要があります。

アメリカ食品医薬品局(The U.S. Food and Drug Administration)は、カフェインは利尿を促進するため、暑熱環境での運動中にカフェインを含む飲料を摂取する場合は、それにプラスしてカフェインを含まない水分も一緒に飲むことを推奨する、としています3

カフェインの過剰摂取ってどれくらい?

「過剰な量のカフェインを摂取しない限り」と言いましたが、では「過剰な量」ってどれくらいなのでしょうか?

カフェインを過剰摂取すると、以下のような症状が出てくることがあります。

  • 不眠(寝れない)
  • イライラする
  • 不安・心配
  • 心拍数の増加
  • お腹の調子が悪い(不快感・胸焼け)
  • 吐き気
  • 頭痛

これらの症状が思い当たったら、カフェインの過剰摂取が疑われます。

アメリカ食品医薬品局は、「1日400mg(=コーヒー4〜5杯分)」くらいまでのカフェイン摂取であれば、基本的にネガティブな効果を引き起こすことはないとしています3

鈴木祐さん著書「ヤバい集中力」では、”一度(短時間)”に400mg以上のカフェイン摂取(もしくは体重1kgあたり10mg以上の摂取)は、上記した症状のような副作用が出る可能性があるため控えるべき、と示されています。

水分補給に関しても、メタアナリシスには、一度に300mg以上のカフェインを摂取することで、一時的におしっこの量は増えることはあるが、それが身体の脱水を引き起こすほどのものではない、と示しています。

ただカフェインは、その人の体質によってカフェインに強い・弱いの個人差があるため、もし体調に変化が合った場合(頭痛・疲労感・不安感・腹痛など)は、カフェインの摂取を抑えましょう。

また「薬を服用している人」や「妊婦の方」は、カフェインの摂取量を抑える必要がある可能性があるので、かかりつけの医師に話してみてください。

脱水状態ではないか心配なら「おしっこの色」をチェック

運動前にコーヒーを飲む方や、普段結構な量のコーヒーを飲む方は、利尿作用が働くとどうしても「体内の水分量が足りなくなってないかな?」と心配になる場合があります。

そんな人は、トイレに行った時に自分の「おしっこの色」をチェックしましょう。

おしっこの色が「透明〜薄い黄色(レモネード色)」であれば、身体はしっかりと水分が補給されています。

「濃い黄色〜茶色気味」であった場合は、身体が脱水状態の可能性があります(詳しくは「おしっこの色を見れば脱水状態かどうかがわかる|熱中症ドットコム」に書いてありますのでぜひこちらも)。

まとめ

僕は毎日2杯ほどはほぼ必ずコーヒーを飲みます。利尿作用もしっかり感じていて、コーヒーを飲むとおしっこが近くなります(笑)

でもおしっこの色がいつも透明に近いので、脱水は気にしていなかったのですが、これではっきり「コーヒーはちゃんと水分補給になっている」ということが明らかになり、安心しました。

どんなものでも過剰摂取は身体によくありません。コーヒーもほどよく楽しみましょう。

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