筋肉痛ってシンドイですよね? 階段の上り下りで脚が痛くてぎこちない動きになったり、次の日の練習・トレーニングで思い通りに動くことができなくなったりします。

実際、筋肉痛になると筋力は最大で20%ほど低下します。そんな状態でトレーニングをしても、効果的とは言えません。

よく「筋肉痛にならないとトレーニングの強度が足りない」とか「筋肉痛になるくらい筋トレしないと意味がない」という話を聞きますが、そんなことはありません。

多くの研究によって「筋肉痛があろうがなかろうが、筋肉痛の度合いと筋肉の成長の効果に関係性はない」ことが明らかになっています。

だったら筋肉痛にはならないほうが良いですよね? 予防できるならしたほうが良い。アスリートも、明日試合があるなど、どうしても筋肉痛になりたくないときってありますよね?

というわけで今回は、様々な研究によって明らかになっている「筋肉痛(遅発性筋肉痛:Delayed Onset Muscle Soreness)を予防するためにできる2つのこと」をお伝えします。


>>今回の参考文献・資料はこちらです。

  1. 【Breif Review】Treatment and Prevention of Delayed Onset Muscle Soreness
    Declanらがストレングス&コンディショニングリサーチで発表した遅発性筋肉痛のケアと予防についてのレビューです。
  2. Damage protective effects conferred by low-intensity eccentric contractions on arm, leg and trunk muscles
    軽い強度での伸張性収縮運動が筋肉の損傷を守る効果があることを示した、Huangらによる2019年発表の研究です。
  3. Effects of stretching before and after exercising on muscle soreness and risk of injury: systematic review
    運動の前後でストレッチをすることは筋肉痛の予防・ケアになるのか?を調べたシステマティックレビューです。
  4. 別冊Newton 筋肉の科学知識
    私の好きな雑誌の1つである別冊Newtonです。筋肉に関する面白い話がたくさん載っています。

1)筋肉痛になる原因を知って予防する

exercise-intensity

筋肉痛を予防したいなら、筋肉痛になる原因を知って、それを起こさないようにすれば良いですよね? 筋肉痛を引き起こす原因・要因は3つあります。

  1. 強度の高い運動
  2. 慣れていない運動
  3. 伸張性収縮を伴う運動

まず、激しい運動(=強度の高い運動)を行うと筋肉痛になりやすいです。また、普段行わない(=身体が慣れていない)運動・活動を行うと、それも筋肉痛を引き起こす原因となります。

更に、そこに「伸張性収縮(=エキセントリック収縮)」が加わると、より筋肉痛になりやすくなります(伸張性収縮についての解説は下記)。

伸張性収縮を含まない運動をする、というのはなかなか難しいですが、「運動の強度」と「慣れた運動をする」の2つは、自分でコントロールしようと思えばできます。よって、以下のようにすれば筋肉痛の予防をすることができます。

  1. 運動の強度を落とす
  2. 普段やっている運動をする

もちろん、アスリートや運動部の選手、自分のパフォーマンス能力を高めたい人が常に運動強度を落とし、普段やっている運動ばかりをやっていれば、能力の向上はありません。

ですが、明日大事な試合があるからどうしても筋肉痛になりたくないときや、久々に運動をするから筋肉痛になりそうだ、とあらかじめ予想できる場合は、この2つをコントロールすることで筋肉痛を予防、もしくは軽減することができます。

まず、強度の高い激しい運動をしないようにしましょう。筋トレで重いダンベルを使ったり、100%の力でダッシュを何本もやるなどすると、身体に負荷がかかりすぎて筋肉痛になる可能性があります。

また、普段やらないような動きをするのもやめます。例えば、普段ウエイトトレーニング(ダンベルやバーベル、マシンを使ったような筋トレ)をあまりしない人がウエイトトレーニングをすると、筋肉痛になりやすいです。

どうしても筋肉痛になりたくないという場合は、この2つに注意することで、筋肉痛を引き起こさずに済んだり、筋肉痛のレベルを低く抑えることができるでしょう。

いくつかの研究では「遅筋(slow-twitch fibers)」よりも「速筋(fast-twitch fibers)」のほうが筋肉痛になりやすい、と示しています。つまり、ジョギングよりもダッシュの方が筋肉痛になりやすい、といった感じです。 

2)筋肉痛の予防には「2日前に軽い筋トレをする」ことが効果的

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筋肉痛を予防するためにできるもう1つのことが「2日前に軽いエクササイズをする」です。

アスリートや運動部の選手など、ほぼ毎日トレーニングをしている人には使いづらい方法かもしれませんが、知っておいて損はないと思います。

週に数回の運動をする人や、病み上がりで久々にトレーニングを再開するという方、もしくは絶対にこの日は筋肉痛になりたくないという日があるアスリートは、「強度の高い運動をする(=筋肉痛を引き起こしそうな運動をする)2日前に、その筋肉を使った軽い筋トレをする」ことが、筋肉痛を予防する効果があると研究によって示されています。

具体的に言うと、筋肉痛を予防するためには以下の3ステップを行います

  1. 筋肉痛を予防したい筋肉を決める
  2. その筋肉を「ストレッチさせた状態」で「等尺性収縮の運動」を行う
  3. その筋肉を使って「軽い負荷(全力の10%程度の強度)」で「伸張性収縮の運動」を行う

詳しく解説していきます。

等尺性収縮と伸張性収縮とは?

ここで少し、等尺性収縮(アイソメトリック収縮)と伸張性収縮(エキセントリック収縮)について解説します。

等尺性収縮とは「筋肉の長さが変わらない状態で筋肉が力を発揮している」状態のこと。例えば「パームプレス(下画像)」です。

Palm-Press-Exercise
The Ladies Roomより

両手を胸の前で押し合うエクササイズですね。お互いに押し合っているので、腕や胸の筋肉は力を発揮していますが、筋肉は縮んだり(短くなったり)ストレッチされたり(長くなったり)はしていないですよね? このような運動を等尺性収縮と言います。

一方、伸張性収縮とは「筋肉がストレッチされながら力を発揮している」状態のこと。例えば「アブローラー」のようなエクササイズですね。

ab-roller

アブローラーを前に転がして上体を倒していくと、腹筋に力が入って耐えようとしますよね? 腹筋に力が入っていながら、腹筋はストレッチされています。

つまりアブローラーを前方に転がしたときは、腹筋群の伸張性収縮の運動が行われているということになります。

先ほどちょこっと補足しましたが、この伸張性収縮は、筋肉痛を引き起こす要因の1つです。運動の中で伸張性収縮がたくさん起きた筋肉が、筋肉痛になりやすいです。

筋肉痛を予防する軽いエクササイズ例

上記しましたが改めて、筋肉痛を予防するためには、以下の3ステップを「強度の高い運動を行う2日前」に行います。

  1. どの筋肉の筋肉痛を予防したいか決める
  2. その筋肉を使って、その筋肉を「ストレッチした状態」で「全力で等尺性収縮の運動」を行う(目安:5秒×2〜5回)
  3. その筋肉を使って「軽めの負荷(全力の10%程度の強度)で伸張性収縮の運動」を行う(目安:10回×3セット)

「スポーツをする」という場合は全身運動のため、なかなか全部の筋肉の筋肉痛を予防することは難しいかもしれません。

ですが、普段よく筋肉痛になる部位や、ここの筋肉が痛くなると翌日の仕事・活動に支障をきたすということが予想できる場合、その筋肉を使ったエクササイズを「2日前」に行っておくと、強度の高い運動を行った後に起こる筋肉痛を予防(もしくは軽減)する効果がある、ということです。

Huangらによる2019年の研究では「2日前」が推奨されていますが、参考資料「別冊Newton」の中で野坂和則教授は「一週間前〜前日」までに行うと良い、と示しています。運動直前のウォームアップで行っても筋肉痛予防にはなりません。

それでは、2つの筋肉を例に、筋肉痛予防に使えるエクササイズを紹介します。

1)大腿四頭筋の筋肉痛を予防する

「前もも」の筋肉痛を予防するためにできるエクササイズを紹介します。

まずは等尺性収縮。前ももの等尺性収縮は「サッカーボールを蹴るような動作」を行います。やりやすいのは「レッグエクステンション」マシンを使う方法です。

  1. ウエイトをかなり重くする(全力を出しても動かないように)
  2. 膝を90度に曲げて、足をマシンにセットする
  3. 5秒間、全力で膝を伸ばそうとする
  4. 少し休憩して、これを2〜5セット行う

バランスボールがあれば、椅子に座って壁を使えば自宅でもできます。

筋肉痛の予防のためには、等尺性収縮は「全力でやる」ことが大切です。

次は「軽めの伸長性収縮運動」です。これは「スクワット」が良いです。どこでもできますね。

前ももにしっかりと伸張性収縮をかけたいので、腰を落とす動作をゆっくり行いましょう。目安は「10回×3セット」です。

普段よくトレーニングをしている方は自重だと負荷が低すぎるかもしれないので、軽いダンベルを持つと良いでしょう。

2)大胸筋の筋肉痛を予防する

次は「胸」の筋肉の筋肉痛を予防するためにできるエクササイズです。

先ほど等尺性収縮の解説の例で「パームプレス」を紹介しましたが、このエクササイズだと大胸筋がストレッチされた状態でのエクササイズではないので、少し効果が低いです。

大胸筋の筋肉痛予防のための等尺性収縮運動は、下動画「ウォールチェストストレッチ」をした状態で、壁を押し続けるのが良いです。

  1. 肘を肩の高さに上げ、肘を90度に曲げます
  2. 肘〜手を壁に当て、胸をストレッチするように、体を壁とは逆方向に回旋します
  3. 胸にストレッチを感じた状態で、肘と前腕で全力で壁を押します
  4. 5秒押して少し休憩、を2〜5セット行う

前もものときも言いましたが「全力で」行うことが重要です。

軽めの伸張性収縮運動は「腕立て伏せ」が良いでしょう。ただ、普段あまり運動をしていない人は、普通の腕立て伏せでは強度が強すぎて、このエクササイズで筋肉痛になってしまいます。よって、膝立ちで行ったり、壁を使って行うのが良いでしょう。

「膝立ち腕立て伏せ」はこんな感じ。

普通の腕立て伏せよりも負荷は小さくなります。ただ、女性だとこれでも負荷が高すぎる(このエクササイズで筋肉痛になってしまう)可能性があるので、そんな場合は「壁腕立て伏せ」が良いでしょう。

大胸筋に伸張性収縮をしっかりかけるためには「肘を曲げる動作」をゆっくり行いましょう。

運動前の静的ストレッチは筋肉痛の予防にならない

stretching

ちょっとだけ補足です。多くの人が運動をする前に準備運動として行っているのが「スタティックストレッチ(静的ストレッチ)」です。スタティックストレッチとは、筋肉をジワーッとゆったり数十秒伸ばすストレッチのことです。

このスタティックストレッチは、怪我の予防や柔軟性の向上には効果があるだろうと示す研究はありますが、筋肉痛の予防にはならないと多くの研究によって示唆されています。

まとめ

遅発性筋肉痛を予防するためにできることを2つ紹介しました。

  1. 運動の強度を落とし、慣れている運動を行う
  2. 2日前に軽いエクササイズを行う

「軽いエクササイズ」は、3つのプロセスを行います。

  1. 筋肉痛を予防したい筋肉を決める
  2. その筋肉をストレッチさせた状態で、全力で等尺性収縮の運動を行う(5秒×2〜5セット)
  3. 軽い負荷(全力の10%程度)で伸張性収縮の運動を行う(10回×3セット)

久々に運動をするという方や、少しでも筋肉痛を予防するためにできることはしたい、という方はぜひ試していただければと思います。

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