ちょっと前の記事で「推定エネルギー必要量」というものを紹介しました。
その記事で紹介した表にあるエネルギー量は「平均的な体格で普通の生活をしている人」向けでした。部活動やスポーツチームで毎日激しい運動・活動をしている人は、もっと多くのエネルギーが必要です。
今回は、日本体育協会の教科書より「アスリートが1日に必要なエネルギー量」を計算する方法を紹介します。
>>今回の参考資料はこちらです。
「日本体育協会:スポーツと栄養」
日本体育協会の教科書からです。
以前書いた栄養に関する記事は「バランスのよい食事とは?エネルギー摂取と各栄養素について」です。こちらも一緒にお読みください。
推定エネルギー必要量ってなんだろう?
推定エネルギー必要量とは、食事によって摂取するエネルギー(=エネルギー摂取量)と、活動によって消費するエネルギー(=エネルギー消費量)がちょうど同じ量、つまり合計すると0(ゼロ)になる確率が最も高くなると推定される、習慣的な1日当たりのエネルギー摂取量のこと。
よく、体重を減らすためにダイエットをしている人が、カロリーの高さを気にしたりしてますよね。
たとえば、1日の食事で2000キロカロリー(kcal)を摂取したとします(=エネルギー摂取量)。そして、その日この人は1日の活動(例:ウォーキング, 家事, 自転車で近くのスーパーに買い物 など)で1800キロカロリーを消費したとします(=エネルギー消費量)。すると、2000 − 1800=200となり、プラス200キロカロリーで1日を終えることになります。言い換えると、エネルギー摂取量の方が多かったということです。
エネルギー摂取量の方が多い生活を続けると、だんだん太っていきます。使わなかったカロリーがどんどん体にたまっていきますからね。逆に、エネルギー消費量の方が多いと、だんだんやせていきます。体内に貯めていたエネルギー(=グリコーゲンや脂肪など)をどんどん使っていることになりますからね。話を戻すと、推定エネルギー必要量というのは、このエネルギー摂取量とエネルギー消費量が同じになるように推定されたものです。
それでは、自分に必要な1日のエネルギーはどれくらいなのかを、前回の表を使わずに、自分で計算してみましょう。
1)まずは除脂肪体重(脂肪を除いた体重)を計算
これはまず、体脂肪量を計算します。そして、体重からその体脂肪量を引くと、脂肪が除かれた除脂肪体重が求められます。
体脂肪量 (kg) = 自分の体重 (kg) × 自分の体脂肪率 (%) ÷ 100
除脂肪体重 (kg) = 自分の体重 (kg) − 体脂肪量 (kg)
2)次に基礎代謝を求める
まず、基礎代謝ってなんだろう、というところから解説していきます。
基礎代謝とは、1日中なーんにもせず、ただ家でずーっと横になってゴロゴロしてても消費するエネルギーのこと。もうちょっとちゃんと説明すると「何もせずにじっとしていても、生命活動を維持するために生体で自動的に(=生理的に)行われる活動で必要なエネルギーのこと(Wikipediaより)」 を、基礎代謝といいます。
ということで、基礎代謝量の求め方。1)で求めた除脂肪体重を使います。
基礎代謝量(kcal)= 28.5 × 除脂肪体重(kg)
3)次に、自分がやっているスポーツ・種目の現在の身体活動レベルを調べる
身体活動レベルは、選手が行なっているスポーツの種類によって少し異なります。当てはまる数値を調べましょう。
- 持久系スポーツ:2.5(シーズン中),1.75(オフトレーニング期)
- 筋力・瞬発系スポーツ:2.0(シーズン中), 1.75(オフトレーニング期)
- 球技系:2.0(シーズン中), 1.5(オフトレーニング期)
4)これで、1日に必要なエネルギー量を求めることができる
1日に必要なエネルギー量を求める式は「1日に必要なエネルギー量(kcal)= 基礎代謝量(kcal)× 身体活動レベル」なので、それぞれここまで求めてきた数値を当てはめていきます。
一日に必要なエネルギー量の求め方を、例として紹介します。
(例)体重67kg、体脂肪率12%のバスケットボール選手(シーズン中)
① 体脂肪量 = 67(kg)× 12(%)÷ 100= 8.04(kg)
除脂肪体重 = 67(kg)− 8.04(kg)= 58.96(kg)
② 基礎代謝量 = 28.5 × 58.96(kg)= 1680(kcal)
③ 身体活動レベル:シーズン中の球技スポーツなので2.0
④ 1日に必要なエネルギー量 = 1680(kcal)× 2.0 = 3360(kcal)
ということで、このバスケ選手は1日に3360キロカロリーを食事でとる必要がある、ということがわかりました。
まとめ
摂取エネルギー不足が何日も続くと、体内(筋肉や肝臓)に貯めてあるグリコーゲン(=エネルギー)をガンガン使うことになってしまうので、長い時間トレーニングや練習をすることができなくなってしまいます。すぐ疲れてしまい、疲労もたまり、集中力も低下するのでケガしやすくなったりもします。
今回紹介した計算で求めたエネルギー量のほうが、前の記事で紹介した表よりはより詳しく、自分が1日に必要であろうエネルギー量をより正確に知ることができますが、これもあくまで参考です。計算によって出たエネルギー量を摂取しても日に日に体重が減ってくるとか、疲れがどんどんたまってるなーと感じた場合は、エネルギー摂取量が足りていない可能性があります。
計算によって出たエネルギー量を参考に、あくまでもスタート地点として、体重の変化(朝起きてすぐ、朝食を摂る前に体重を測るといいでしょう)や体調によって、自分の1日に必要なエネルギー量を探ってみてください。
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