指は、スポーツ中に最もケガをしやすい部位の1つです。

にもかかわらず「ちょっと痛いけどすぐなおるだろう」と、あまり重く受けとめずに軽くみて、しっかりとケアがされないことが多い部位でもあります。

指は、小さくてゴツゴツしている骨同士がくっついて関節を作っています。その上、外からの衝撃・外力を吸収する筋肉や脂肪も少ないので、 衝撃をもろに受け、とてももろい部位です。

今回は、指のケガでよく言われる「突き指」について、様々な種類の突き指を紹介します。また、それぞれの対処法も解説します。


>>参考文献はこちら。

  1. It’s Not “Just A Finger”
    アスレティックトレーニングジャーナルより、2000年に発表された指に関する論文です。
  2. Arnheim’s Principles of Athletic Training: A Competency-Based Approach
    大学院でアスレティックトレーニングを学んでいるときに使っていた教科書です。今でもわからないことがあると辞書のように使っている本です。
  3. Jam Injuries of the Finger: Diagnosis and Management of Injuries to the Interphalangeal Joints Across Multiple Sports and Levels of Experience
    1966〜2015年の間に発表された「指の怪我に対する診察や治療」に関する研究論文がレビューされ、まとめられた論文です【2018/5/15に追加

様々な「突き指」とその対処法

jammed-finger-basketball

突き指とは、”指先に強くモノが当たるなどして、腱・関節・骨などを傷めるケガの総称(Wikipediaより)” です。

ここで注目すべきは「腱・関節・骨などを傷めるケガの総称」というところ。

つまりは、腱が切れても、関節が損傷しても、靭帯が切れても、骨が折れていても、指のケガはすべて「突き指」と呼ばれてしまうのです。

「突き指だから大丈夫。すぐなおるさ」ではないのです。本当にたいしたことないときもありますが、もしかしたら骨折をしているかもしれないし、腱が断裂している可能性だってあります。

ケアをしっかりせずに放っておくと、ずっと腫れが引かなかったり、うまく指を曲げ伸ばしできなくなることもあります。指をうまく曲げられなくなると、指で何かモノをつまむ力や、手でモノをにぎる力(=握力)が弱くなってしまうため、スポーツのパフォーマンス低下にもつながってしまいます。

ここからは「突き指」でよく起こるケガと、そのケアの方法を紹介していきます。

1)突き指で「爪」を怪我した

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なにかに指先をぶつけたり、スポーツ中にタックルを指先に受けたり、ボールが当たったとき、または、ドアに指を挟んでしまったりして、爪の下で内出血が起きてしまうことがあります。これを「爪下血腫(そうかけっしゅ)」と言います(上の写真のようなもの)。

このようなことが起きた場合、まずはすぐに氷や氷水で冷やしましょう(=アイシング)。氷で冷やすことで血液の循環を悪くして、内出血を最小限に抑えるのが目的です。

冷やし方としては、紙コップに水と氷を入れて、そのコップの中に指を入れるのが1番簡単な指の冷やし方でしょう。

アイシングを含めた怪我の応急処置については「怪我の応急処置にはPRICEがベスト|適切な処置で最短の復帰を」の記事で詳しくやり方等を解説しています。

たとえ爪の下が紫色になって内出血してしまったとしても、痛みがなければ(=すぐに痛みがひいたら)特に問題はありません。1日に数回アイシングをして様子をみましょう。ただの内出血であれば、血は自然に吸収され、爪の色も元に戻っていきます。

もし腫れてきたり、痛みが増してきたら、病院へ行きましょう。ただの内出血ではなく、腱や靭帯を傷めている可能性があります。

もし内出血が多いと、爪の内側から爪を圧迫して痛みを引き起こします。そのような場合、爪に小さな穴をあけて血を抜くことで痛みが和らぎます。

もしアスレティックトレーナーの方が近くにいれば、その人に血を抜いてもらいましょう。もしいなければ、病院に行って血を抜いてもらいましょう。

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>>ここから少し、トレーナー向け。

Nail breed drainage
Instructablesより

血を抜くために爪に穴をあけるのは、熱したペーパークリップや専用ドリル、注射針などを使って行います(右写真はドリル)。

2〜4ミリ程の穴を1〜2カ所あけると(穴が小さすぎると、血で穴が塞がれてしまって血が抜けない)、自然に血が出てくるはずです。もし出てこなければ、少しずつ爪を圧迫して、血を穴から押し出すように抜いていきます。

血がある程度抜けると、痛みはかなり減ります。その後は水とソープでよく洗い、バンドエイドなどを貼って、空けた穴からばい菌が入らないように保護しましょう。

2)突き指で「靭帯」を痛めた

ではまず、「靭帯」ってなんなのでしょうか?

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靭帯とは、”強靭な結合組織の短い束で、骨と骨をつないで関節を作る(Wikipediaより)” モノ。ここで重要なことは「骨と骨をつないでいる」モノだということ。

人間の体にあるすべての骨は、靭帯によって他の骨とくっついており、関節(伸びたり曲がったりする体の部位)ができています。

上の手の画像で、白い束のように見えるものはすべて靭帯です。手と指には合わせて27個の骨がありますが、隣り合う骨はすべて1つ以上の靭帯でつながっています。

それでは、指の話にうつりましょう。

finger-ligament
ピアニスティックノートより

突き指によってケガをする可能性の高い指の靭帯は「側副靭帯」と呼ばれる関節のサイドにある靭帯です(右図を参照。指を横から見た図です)。

①の爪のケガと同じく、ボールや何か物体に指先をぶつけたりしたときや、転んで手を地面についたときに指を変についてしまったりして、指の関節が横方向(=本来は曲がらない方向)に曲がってしまったとき、この側副靭帯を傷めてしまいます。

側副靭帯を傷めたときの特徴は、

  • 関節が腫れる/紫色になる/変色する
  • 関節(=指が曲がるところ)のサイドを触ると痛みがある

の2つです。このような症状がある場合の対処法は、まず①の爪のケガと同じようにアイシング(RICE)をして血流を抑えて、腫れを最小限に抑えましょう。

15〜20分程アイシングをした後、再び指をチェック。ケガをしてない方の指と比べて、どれくらい腫れがあるかをチェックします。

もし明らかに腫れている場合は、もう運動はやめて、その指が動かないように固定して(=添え木やサポーターなどを使って)安静にし、ドクターのところ(整形外科)に行きましょう。

靭帯の部分断裂や完全断裂が起きてしまったとき、「ただの突き指だからすぐ治るわ」と処置をしないと、痛みが全然ひかなかったり、関節が変形してしまったり、不安定なままで握力が弱くなってしまったり、指がうまく曲がらなくなったりと、スポーツ中だけではなく、日常生活にも様々な影響が起きる可能性があります。指の怪我が起きたら、必ずドクターやトレーナーに診てもらい、きちんとした対処をしてもらいましょう。

【トレーナー向け】指の側副靭帯損傷のチェック方法

指の側副靭帯が損傷しているかどうかをチェックするには、上で挙げたように「関節の腫れや変色」と「圧痛」が大きなポイントです。

また、靭帯が部分断裂 or 完全断裂している場合は、関節のゆるみ(不安定性)が起きます。関節に横方向へのストレスをかけ、怪我をしていない指の関節に比べてゆるみがあるかどうかをチェックします。

側副靭帯の状態をチェックするスペシャルテストの動画を紹介します。特に曲げた状態(約30度)でのストレスチェックは少しコツがいります。ぜひ練習してみてください。

次に、指の曲げ伸ばしがしっかりできるかどうかをチェックします。というのも、突き指で腱が切れると指の曲げ伸ばしができなくなります(詳しくは下で)。

もし左右の指を比べて腫れがなく、痛みもなく、指の曲げ伸ばしもしっかりできて、握力もケガをしていない方と同じくらいの力があれば、バディーテープ(=Buddy Tape)をして指を保護して、練習を再開してもよいでしょう。痛みや腫れが増したら、すぐに練習をやめて再びRICEを行います。

バディテープの方法

buddy tape

バディテープは、損傷した靭帯がそれ以上ひどくならないように固定するテーピングです。

右の写真は、バディテープ用の商品ですが、薬局などで売っているホワイトテープで同じように巻くことができます。

ポイントは2つ。

1)関節には巻かない

人差し指〜小指には、第一関節(指先の方)と第二関節(指先から二番目)の2つの関節があります。

例えば、第二関節の側副靭帯を傷めてしまった場合、その第二関節の上下にテープを巻き、第二関節はしっかり曲げ伸ばしができるようにテープは貼りません。

ちなみに上の写真は、指の第二関節の靭帯を傷めた場合のバディテープです。

2)傷めた指の小指側と固定

例えば中指の靭帯を傷めてしまい、バディテープをする場合は、人差し指ではなく、薬指と一緒にバディテープをします。

上の写真は、人差し指の第二関節の靭帯を傷めているため、人差し指から小指側の中指とバディテープされています。

ここで1つ重要なこと。テーピングは「治療」ではありません。あくまで「予防」をするためのものです

このバディーテープは、ケガをそれ以上悪くしないために巻くものであって、バディーテープをしてもケガはなおりません。練習が終わったらアイシング/RICEをやって、ケアしましょう。

3)マレットフィンガー(Mallet Finger)

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Scott&WhiteHealthcareより

マレットフィンガーは、ベースボールフィンガーやバスケットボールフィンガーとも呼ばれます。

これは、野球のボールやバスケットボールが指先に当たり、突然の強制的な指先の屈曲(=指が曲がること)によって、伸筋(=右図で言うExtensor Tendon:指が曲がった状態から伸ばす筋肉)の腱が断裂してしまったり、指先の骨(=末節骨)から剥離してしまうケガのことを言います。

第一関節(=指先に近い方の関節)を伸ばすための筋肉の腱が切れてしまうため、指を伸ばそうと思っても伸ばすことができなくなります(30度くらい曲がったままそれ以上伸びない)。

①第一関節の指の背側(=甲側)に痛み」があって、「②指の先がずっと曲がったまま」で、「③指をうまく伸ばすことができない」場合は、マレットフィンガーが強く疑われます。すぐ病院に行きましょう。

処置としては、副木などで固定してもらい、その固定を6〜10週間くらい継続する必要があります。

4)ジャージーフィンガー(Jersey Finger)

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DoctorsGateより

ジャージーフィンガーとは、3)のマレットフィンガーとは逆で、指を曲げる筋肉(=屈筋)の腱が切れてしまったり、指先の骨が剥離してしまうケガのことです。

ジャージーフィンガーと言われる理由は、練習・試合中に相手のジャージ・ユニフォームなどをつかんでそれを振り払われたときや、指が引っかかってしまったとき、指が曲がった状態からいきなり強力な力で指が伸ばされたときに、腱が切れてしまうことが多いからです。

ちなみに、ジャージーフィンガーは薬指で起きることが多いです(ジャージーフィンガーの約75%が薬指で起きている)。

ジャージーフィンガーが起きたとき(=腱が切れたとき)、多くの場合は選手自身がポップ音(=腱が切れる音)を聞いたり感じることが多いと言われています。

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Carexより

他の症状としては、マレットフィンガーとは逆で、指を曲げようとしても曲げることができなくなります(右図は薬指がジャージーフィンガーになった例)。

指を曲げる筋肉の腱が切れてしまいますからね。あとは、指先が紫色に変色し、腫れてきます。

このジャージーフィンガーは、多くの場合手術が必要になります。しかも、できるだけ早く手術を行なった方が、治りは早くなります。

①指先が紫色/腫れている」になって「②指を曲げることができない」という症状があったら、すぐ病院に行きましょう。

まとめ

指のケガは「突き指」と一言で済まされてしまうことが多いですが、ちょっとした内出血から、手術が必要になるケガまで様々です。

この記事で紹介したケガはよく起こるものですが、他にもたくさんの種類の指のケガがあります。

突き指をしたなと思ったら、「たいしたことないだろうから大丈夫!」と軽視するのではなく、まずはRICE/アイシングを15分程度やって、出血や腫れを最小限に抑えて、そこからしっかり指は曲がるかどうか、伸ばすこともできるかどうか、腫れの程度や変色はどんな感じか、をしっかり確認をしましょう。

なにかおかしいなと思ったら、すぐ病院に行って診てもらいましょう。

“ただの突き指”だと思うな!という言葉を、頭に入れておいて欲しいなと思います。

追記:2015/6/30】突き指についての記事、もう一つ書きました。「突き指パート2〜ボタン穴変形とスワンネック変形〜」です。少しマニアックですが(笑)、ぜひこちらも読んでみてください。

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