毎年夏になると流れる熱中症のニュース。しかし、「暑いから熱中症になるのはしょうがない」ではないのです。しっかり予防・対策をすれば、暑い日だって熱中症にはなりません。

どのように予防すればいいのかを知って、熱中症にならないようにしましょう。夏に運動・スポーツをする人は、特にしっかり熱中症の予防・対策をして、体調を崩さずに常に100%の力を出せるようにしましょう。

熱中症に特化したサイトを作りました】ATSUSHIが運営するもう1つのブログ「熱中症ドットコム」では、熱中症関連の記事のみを書いています。ぜひこちらもご覧になっていただけたらと思います。


>>参考文献はこちらです。

nata-heat-illnessNATA Position Statement: Exertional Heat Illnesses
参考にした論文は、熱中症の種類・原因・症状ページで紹介した論文と同じで、NATAから出ている熱中症についてまとめられた論文です。

熱中症予防の6つのキーポイント

それでは、熱中症を予防するために覚えておきたいポイントを紹介していきます。

1)道具の準備

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誰かが熱中症になったときすぐに適切なケアができるよう、道具を準備しておきましょう。

  • 氷や、アイスバッグをつくるための氷のうやビニール袋
  • 水(氷)風呂をするための大きいバケツやプール
  • 冷たい水やスポーツドリンク
  • 体温計
  • 携帯電話(なにかあったときにすぐ救急車を呼べるように)

特に「氷のう」は、トレーナーはもちろん、スポーツチームの指導者や、スポーツをする子供をもつ両親などは、1つは持っておいて損がない道具です。熱中症予防や対処に使えるとともに、怪我の応急処置にも役立ちます。

氷のうを使った怪我の応急処置について、「怪我の応急処置にはPRICEがベスト|適切な処置で最短の復帰を」に詳しく書いてあります。ぜひこちらもお読みください。

2)暑熱馴化

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夏の練習を開始する場合は(夏休みなど)、身体を徐々に暑さになれさせるため、約14日間を暑熱馴化期間として、徐々に練習の時間や強度を増やしていくことが大切です。いきなり二部練とかはやめましょう。

もし早い段階から暑熱馴化を開始したい場合は、余分に1枚着たり、長ズボンをはいてトレーニングをすることで暑熱馴化を進めることができます(ただし余分に服を着込む場合は、水分補給をこまめにして、脱水や体内に熱がたまりすぎることに十分注意を払う必要があります)。

詳しい暑熱馴化(しょねつじゅんか)の方法については「熱中症対策!夏の暑さに身体を慣れさせる暑熱馴化の方法」で詳しく解説しています。ぜひこちらもお読み下さい。

3)熱中症の知識の共有・教育

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チームでトレーナーをしている人は、夏前に監督・コーチや選手を含めて、熱中症について授業やレクチャーを行い、チーム全員で熱中症についての知識を共有しましょう。監督・コーチには、練習中に選手に何か異変があったときにすぐ気づけるように。選手たちには、それぞれ自分たちで水分をこまめに補給する重要性や、熱中症の症状が出てきたときにすぐに監督やトレーナーに報告できるように。

また、気温と湿度が高い日は特に気をつける必要があることも。女の子には特に、ダイエットのために(体重を減らすために)運動前に充分食事や水分をとらないことはとても危険であることをしっかり伝え、教育する必要があります。

4)バランスの良い食事・6〜8時間睡眠をとる

食事でバランス良く炭水化物やミネラル(電解質)をとることは、熱中症の予防に不可欠です。

また、食事に関して言えば、普段の食事はもちろん重要ですが、運動中の食事にもしっかりと気を配りましょう。特に1日に2回練習をする(二部練する)場合は、食事休憩として最低2〜3時間は取りましょう。それくらいの時間をとることで、食事で摂取した水分・塩分・栄養素が血液として体全体に行き渡り、小腸でしっかり消化されます。

「バランスの良い食事」について「食事のバランスをチェック|1日に必要なえエネルギー摂取量と栄養素」で詳しく解説しています。

5)適切な水分補給

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運動中に体から出ていく水分は「汗」と「尿(おしっこ)」があります。特に夏のトレーニング中は、汗で大量の水分が体から出ていくため、出ていく分しっかり補給をしなくてはいけません。

それでは、どのように自分が水分をしっかり補給できているのか?それとも足りないのか?を知ることができるのか。一番簡単な方法は「おしっこの色」をチェックすることです。

5−1)おしっこの色チェックシート(Urine Color Chart)

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自分のおしっこを、1〜8の番号の横の色と比べることで、自分が今しっかり水分がとれているのか、脱水状態なのかがわかります。1〜3の薄い黄色であれば、充分水分がとれていることを示します。4〜8のように濃い黄色や緑がかっている場合は、脱水状態であることを示し、よりこまめに水分を摂る必要があります。

アメリカの大学ではよく、トレーナールーム近くのトイレや、グラウンド近くにあるトイレにこのシートが貼ってあって、練習中に選手自身でチェックできるようになっています。

おしっこの色チェックシートについては、ATSUSHIが運営するもう1つのブログ熱中症ドットコムの記事「おしっこの色を見れば脱水状態かどうかがわかる||熱中症ドットコム」に詳しく書いています。

他の方法として、練習前・練習中 (できれば)・練習後に体重を計ることによって、自分の状態をチェックすることができます。更に言うと、練習中の体重減少を自分の体重の2%以内に抑える、ということが重要です。

詳しい水分補給の方法については「熱中症予防には水分補給が不可欠!水分補給の方法を具体的に解説!」をどうぞ。

体から水分が失われていくと、熱中症になる危険性が増すと同時に、パフォーマンスも低下します。様々な研究によって、体重の1%の水分が失われるとパフォーマンスの低下が始まると言われています。

練習中はこまめに水分(+塩分・電解質)を補給して、おしっこをするときは色をチェック(透明〜うすい黄色を保つ)して、体重減少を最小限にとどめ、熱中症を予防しつつ、自分の能力・パフォーマンスをしっかり発揮できる体を保ちましょう。

また、水分補給は、練習中だけすればいいわけではありません。もし脱水状態で練習を終えて、そのまま水分を補給せずにいると、脱水状態はずっと続き、次の日の練習を脱水状態で始めることになってしまいます。練習前と練習後の体重を比べて、減った分はしっかり補給して次の練習に備えることがとても重要です。

それではどれくらい練習後に水分を補給すればいいのか?

目安としては、1kgの減少に対して1〜1.25リットルの水分を補給するべきです(0.5kg減ってたら500グラムくらい、みたいに計算してください)。

6)気温や湿度が高い日の練習やイベントのガイドラインをWBGT温度によって決めるべき

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WBGTとは、Wet-Bulb Globe Temperatureの頭文字をとったもので、気温・湿度・輻射熱と気流の影響を反映した総合的に暑さを測定できる指標のことです。日本体育協会は、環境評価にはWBGTを使うことが望ましいとしています。

なお、WBGTの記事で紹介されている表は、運動をする人が「Tシャツ・ハーフパンツ」の薄着でトレーニングをする、というのが基準です。つまり、それ以上の厚着をしてトレーニングをする場合(野球のユニフォームやヘルメット、アメフトのショルダーパッドなど)は、より一層の注意が必要です(WBGT温度が高い日は、なるべく薄着でトレーニングすること・薄着でできるトレーニングに内容を変更することが好ましいです)。

また、NATAの論文には「Work:Rest ratio」として、WBGT温度による練習中の休憩時間の目安を、練習と休憩の時間を比で表して紹介しています。

  • 28℃以上(赤・オレンジ)= 1:1
  • 23〜28℃(緑・黄色)= 2:1
  • 18〜23℃(青・緑)= 3:1
  • 18℃以下(青)= 4:1

具体的に説明すると、もしWBGTが25℃であった場合、Work:Rest ratioは2:1であるべきなので、練習を20分やったら10分休憩、くらいのペースで練習を進めていくべきである、ということです。

工夫できることは他にもあります。1日の中で暑い時間帯は10AM〜5PMなので、もしWBGT温度が高い日はこの時間帯を避けるといいでしょう。ウォームアップやクールダウンはできれば日陰で行い、日陰でできない場合は最低限の時間ですませましょう。着用する服もなるべく明るい色を身につけ、濃い色・熱を持つような装飾品はトレーニング中は身につけないようにしましょう。

また、夏に大きなイベント・大会を開催する場合は、近くの病院にその旨をあらかじめ伝えておきましょう。もし可能ならば、緊急時に必要な備品・道具を借りたり、ドクターに会場に来てもらいましょう。特に熱射病は、迅速な応急処置・対処が求められます。ドクターが現場にいれば安心ですね。

まとめ

以上が、熱中症を起こさないためにできる予防の方法です。

選手にとって重要なことは、体調をしっかり管理すること。よく食べて、よく寝て、練習中はこまめに水分補給。調子が悪いなって思ったら、無理をせずに監督・コーチに報告すること。誰にも言わずに我慢することが一番よくありません。熱中症を悪化させます。一言監督・コーチに伝えるだけで、監督・コーチは注意して見てくれますし、何かおかしいなって思ったら止めてくれます。

周りの人(監督・コーチ・親・トレーナーなど)にとって重要なことは、熱中症についての知識をしっかり持つこと。できる限り、暑い時間は避けて練習メニューを組むこと。水や食事のサポートをしっかりすること。

選手を指導する側・支える側の人は特に!夏のトレーニングにむけてしっかり予防・対策をして、「熱中症ゼロ」を目指して頑張っていきましょう!

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