みなさんは、どのようにアイシングをしていますか?

上の写真の選手のように、バンテージを使って氷を固定していますか? それとも、固定はせずに氷のうを皮膚・筋肉の上に置いてじっとしていますか?

今回は、同じ時間の長さで、同じ種類の氷を使ってアイシングをしたとき、そのアイスバッグを何かで圧迫して固定したほうがいいのか? それともただ置いとくだけでもしっかり筋肉はアイシングされるのか? 違いはあるのか?

そんなことを調べた論文から、よりよいアイシングの方法を学びます。ちょっとした違いで、アイシングの効果は変わりますよ。


>>参考文献はこちら。

  1. The Magnitude of Tissue Cooling During Cryotherapy With Varied Types of Compression
    アイシングを、2種類の異なるラップと圧迫なしで行い、筋肉内の温度の変化の違いを調べた研究です。Journal of Athletic Trainingより。

アイシングにはバンテージ?フレキシラップ?何もいらない?

knee-bantage-compression

今回の研究で使われた、アイシングのためにアイスバッグを固定する道具として使われた2種類のラップは「バンテージ」と「フレキシラップ」です。

バンテージとは、上の写真のような伸縮性のある包帯のようなもの。薬局などで見たことがある人もいると思います。

長さや太さも様々なものがあり、アイシングのためだけではなく、運動をする際の関節や筋肉のサポートに使われることもあります。

flexiwrap
diamondathleticより

フレキシラップは、サランラップのようなもので、アイシング用の使い捨てラップです。

アイシングが終わったら破いて捨てることができるため、バンテージと違って、洗ったり乾かしたり、選手が使ったあとにトレーナーに返却したりする必要がありません。

さて、今回の研究では、被験者は3つのグループに分けられ、30分間ふくらはぎのアイシングが行われました。

  1. バンテージで氷を固定
  2. フレキシラップで氷を固定
  3. 固定なし

アイシングを始める前と、30分のアイシングが終わった直後の、肌と筋肉内の温度の差は以下のようになりました。まずは肌の温度から。

  • バンテージ:マイナス20.79℃
  • フレキシラップ:マイナス18.52℃
  • なにもなし:マイナス15.58℃

続いて筋肉内の温度の変化。

  • バンテージ:マイナス9.4℃
  • フレキシラップ:マイナス7.87℃
  • なにもなし:マイナス5.6℃

というわけで、肌も筋肉内の温度も、バンテージを使ってアイシングをしたほうがより下がった、という研究結果が出ました。

ちなみに、アイシングをするべき時間の長さというのは、部位によって変えるべきです。この研究では「ふくらはぎを30分冷やす」というプロトコルが使われましたが、だからと言って手でも腰でも30分冷やせば良いというわけではありません。詳しくは「部位毎のアイシングの時間の目安|アイシングは何分やるのが効果的?」の記事をご覧ください。

バンテージを使ってアイシングをするとより温度が下がる理由

icing-knee-basketball
massiveより

なぜバンテージでアイシングをすると、同じように氷を圧迫して固定したフレキシラップよりも温度が下がるのでしょうか?

今回参考にした研究の著者らは、バンテージの断熱効果によるものだろう、と考察しています。つまりは、バンテージの生地と厚みが、冷却効果を外に逃がさずにしっかりと組織に伝えることを助けたため、温度をより下げたのではないか、ということです。

それでは、アイシングにフレキシラップを使った場合と、何も使わずに固定をしなかった場合では、なぜフレキシラップの方が冷却効果が高かったのでしょうか?

これはアイシングに使われた氷と肌の「密着に関係がありそうだ、ということです。

バンテージやフレキシラップなどで、冷やしたい部位に圧迫をかけながら氷をしっかりと肌に固定・密着させることで、ただ皮膚に乗せておくよりも氷と肌の密着面積が増え、より多くの氷によって組織を冷やすことができるため、冷却効果が増したのだろう、ということです。

まとめ

1つの研究論文の、短めの紹介記事でした。

たかが数℃しか違わない、と思われる方もいるかもしれませんが、もしアイシングによって達成したいことが「肌・筋肉の温度を下げる」ことである場合は、この数℃を毎回、毎日積み重ねることで、身体への効果・与える影響は変わってくるかもしれません。

どうせ同じ時間の長さアイシングをするなら、少しでも効果が高い方が良いですよね?ちょっとした一手間で効果が変わることは他にもたくさんあります。

もしあなたがトレーナーとして活動されているのであれば、よりよい方法を探して、選手に与えてあげてください。

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