あなたは「時差ボケ」を感じたことはありますか?韓国や台湾といった、日本とあまり時差がない場所への旅行ではあまり感じないかもしれません。アメリカやヨーロッパなどに行ったことがある方は、昼間に強烈な睡魔に襲われたり、夜全然眠くないし眠れない、という経験をしたことがあるでしょう。
今回の記事では、異国に出発する前にやっておくべき時差ボケ対策をお伝えします。時差ボケになってしまうと、外国についてから数日はあまり楽しめなかったりしますからね。現地に到着したら全力で楽しむための時差ボケ対策法です。
>>参考文献はこちら。
「Jet Lag in Athletes」
アスリートにおける時差についての論文をまとめたレビューです。
「Jet lag: trend and coping strategies」
一般の旅行者に向けて行われた、時差についてのセミナーのレビューです。
「Coping with jet-lag: A Position Statement for the European College of Sport Science」
European College of Sport Scienceより、時差によるポジションステイトメントです。
時差ボケとは?
まず、時差ボケってなんなのでしょうか?参考文献の1つにはこうありました。
複数(2時間以上)のタイムゾーンを超えることによる、不眠症や過度な眠気などの睡眠障害
旅行などで日本から海外へ行くと、その場所は日本とは時間が違いますよね。例えば、日本が朝の10時のとき、アメリカのニューヨークは夜の9時だったりします。
今までいた場所と着いた場所の時間が違うため、脳と体が混乱してリズムが狂ってしまいます。今までいた場所にそのままいたとしたら朝なんだけど、今いる場所は夜だから寝る時間だから寝ないとだな。でも体は朝のリズムだから寝れない、、、とか、逆に一日中眠くて何もする気にならない、、、気分がすぐれない、、、などといった症状が、時差ボケになるとあらわれます。
この時差ボケと深く関わっているのが「概日リズム(=サーカディアンリズム)」というものです。
時差ボケを引き起こす概日リズム
概日リズムとは、簡単に言えば「体内時計」のこと。少し専門用語を使って説明すると、脳にある視床下部という組織によってコントロールされている、約24時間周期で変動する生理現象のこと。
この体内時計は、太陽をはじめとした人間の周りの環境の光(明るさ/暗さ)と同調(=シンクロ)しており、人間の深部体温や起床/睡眠時間などがコントロールされています。
つまり、この体内時計と現地の環境が合っていないのが、いわゆる「時差ボケ」と呼ばれる現象です。よって、体内時計をできるだけ早く現地の環境に合わせることができれば、時差ボケに苦しまなくて済むのです。
時差ボケになると現れる症状
時差ボケになると、以下のような症状があらわれます。
- 判断力の減少
- 注意力/集中力の低下
- モチベーション/パフォーマンスの低下
- 無気力
- 疲労感
- 頭痛
- 不眠症(夜寝られない/夜中に何度も起きてしまう)
もし時差ボケ対策を何もせずに、日本からアメリカやヨーロッパなどのタイムゾーンがだいぶ違う国を訪れると、下手すると到着してから数日ずっとこれらの症状に苦しむことになる可能性があります。これではせっかくの旅行も全然楽しめなかったり、仕事で来たとしても100%のパフォーマンスを発揮することができなくなってしまいます。
これらの症状は、体内時計と現地の時間が一致したらなくなるので、ぜひ渡航前に対策をして、できるだけ早く一致させられるようにしましょう。
時差ボケ対策6選
それではここから、体内時計と現地の時間を一致させるために、渡航前や渡航中、また現地に着いてからできること・やるべきことを6つお伝えしていきます。
1)渡航先の到着時間を夕方〜夜にする
日本からアメリカやヨーロッパなどの、かなりの時差がある場所へ行く場合、なるべく夕方〜夜に現地に到着する飛行機をとりましょう。飛行機移動で疲れていたとしても1日中起きている必要がなく、すぐ就寝をとることができるので、体内時計をリセットしやすく、時差ボケの症状が軽くなります。
2)機内での水分補給
飛行機内は乾燥しています。飛行機にのっている最中は、こまめに水分補給をしっかり行うことで、到着後の疲労を軽減させることができます。脱水は疲労感を高めるので。
水分をとるとは言っても、アルコールや、カフェインを含むコーヒーや紅茶は避けましょう。アルコールとカフェインには利尿作用があるため、脱水をうながしてしまいます。水やジュースがおすすめです。
3)時計を現地の時間に合わせる
まず飛行機に乗ったら、時計を現地の時間にセットしましょう。現地に到着してからそこの時間に合わせていくのではなく、飛行機に乗った時点から合わせていきましょう。
そして、飛行機の中で寝る場合は、なるべく現地が夜の時間帯に睡眠をとりましょう。おそらく機内も暗くなるはずなので、「暗い環境で睡眠=夜」と脳や体は感じて、体内時計が現地の時間に合ってきます。
もし機内であまり寝られないという人は、アイマスクや耳栓、ノイズキャンセリング付きのヘッドホンなどを使ったり、ルーズな服装で飛行機に乗ることで、できるだけ睡眠が取りやすい環境を自分でつくってみましょう。「睡眠」という行為は、体内時計を合わせる重要な行動なのです。
4)こまめなストレッチ
長時間のフライトの場合は、1時間に1回程度立ち上がったり、少し伸びをしたり、もしトイレに行った時はついでに全身を軽くストレッチしましょう。現地に到着したときの筋肉の硬直やむくみを防ぎ、疲労が溜まることを防ぐことができます。また、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群とも言われます)の予防にもなります。
5)試合本番の数日前には現地入りする
これはちょっと特殊な対策ですが、もしあなたがアスリートの場合、国際大会などで海外へ行くことがあると思います。時差ボケはパフォーマンスの低下を引き起こすと言われているため、試合直前に現地入りすることは、100%のパフォーマンスを発揮することができない可能性がとても高いです。よって、可能なのであれば、試合本番の数日前には現地入りして、体内時計をしっかりと現地に合わせる時間をとるべきです。時差が大きい場所であればあるほど、より早く現地に入ることをオススメします。
6)朝〜昼間は太陽の光を浴びる
こちらは、現地に着いてからの対策となります。
人間の睡眠サイクルは、光への露出とメラトニンの分泌によって調整されています。メラトニンというホルモンが体内にたくさん分泌されればされるほど、人は眠くなります。逆にメラトニンが分泌されないと、人は覚醒します(=目が覚める)。
ヒトは光を浴びると、メラトニンの分泌が抑えられます。逆に、光を浴びない(=夜)と、メラトニンが分泌されます。よって、現地に着いた日〜数日は朝から昼間はちゃんと外に出て、太陽の光をしっかり浴びてメラトニンの分泌を抑えて、脳と体に「今は朝だよ〜日中だよ〜」と教えてあげましょう。
逆に、夜はあまり明るい場所に行くことは控えましょう。太陽の光でなくても、蛍光灯の光などでも長時間浴びると体は日中だと勘違いしてしまいます。夜は光を浴びずに、しっかりとメラトニンを分泌させて、睡眠をしっかりとって脳と体に「夜ですよ〜」と教えてあげます。
飛行機が現地に朝〜昼間に着いた場合は、疲れて眠いかもしれませんが、できるだけ外に出て太陽の光を浴びて、今は日中であることを体に伝えます。軽い散歩やストレッチなどをして、筋肉のかたさや疲労回復に努めて、夜ぐっすり眠る準備をしてください。
時差ボケ対策をするべき人とは?
普段の生活習慣によっては、時差ボケになっても症状があまり出ない人もいれば、逆に時差ボケにかなり苦しむ人もいます。もしあなたが、以下で紹介する「時差ボケの症状がひどくなる」タイプなのであれば、しっかりと渡航前に時差ボケ対策をするべきでしょう。
1)毎日同じ時間に起きて、同じ時間に寝る人
いつも同じ時間に就寝し、同じ時間に起床する人ほど時差ボケの症状がひどくなりやすく、症状がなかなか治らない傾向にあると言われています。生活習慣としてはとても良いですけどね。逆に、寝る時間や起きる時間がいつもバラバラな人ほど、時差ボケの症状は軽くすむ傾向にあります。
2)朝型か夜型か
いつも朝早く起きる朝型の人は、渡航先が東側だった場合、時差ボケが軽くすみます。逆に、夜遅くまで起きていて朝ゆっくり起きる夜型の人は、渡航先が西側だった場合、時差ボケが軽くすむと言われています。
3)フィットネスレベルが低い人
普段、定期的に運動をしている人(=フィットネスレベルが高い人)は、より早く現地の時間に体内時計を適応できると言われており、時差ボケの症状が軽いです。
逆に、普段全然運動しない人(=フィットネスレベルが低い人)は、時差ボケの症状がひどくなる傾向があります。
4)海外に行ったことが一度もない人
初めて海外に行く人は、海外に1度でも行ったことがある人よりも時差ボケの症状はひどくなるようです。時差ボケは経験を積めば積むほど症状は軽くなり、体内時計を合わせる能力も上がるようです。
まとめ
海外に行く前、行く当日、さらに現地に着いてからできる時差ボケ対策についてまとめました。
旅行前に時差ボケについて知っておくだけでも、心のゆとりが違います。しっかりと準備をしておくことで、より楽しい旅行になるでしょう。参考にしてみてください。
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