筋力トレーニング(筋トレ)をしたいなと思っても、何回やったらいいのか?どれくらいの重さでやったらいいのか?休憩はどれくらいすればいいのか?など、わからないことばかりという人は多いと思います。
ですが、たった7個のポイントを理解するだけで、あなたの目標にあったトレーニングメニューを組むことができるようになります。
今回は、初心者でもわかる筋力トレーニングのメニューの組み方を、7つのポイントに分けて、1つ1つ詳しく解説していきます。
>>参考文献はこちらです。
- NASM Essentials of Sports Performance Training
アメリカのNational Academy of Sports Medicine(NASM)という団体が出している資格、NASM-PES(Performance Enhancement Specialist)のための教科書です。私は2015年にこの資格を取得しました。
何を目標にした筋トレメニューを組む?
一言に筋力トレーニングとは言っても、行う回数や扱う重さ、休憩の長さを調節することで、様々な能力を鍛えることができます。
まずは、あなたがどの能力を鍛えることを目標に筋力トレーニングを行うのかを決めましょう。これをしっかりと決めなければ、効果的なトレーニングメニューを組むことはできません。
安定性(Stabilization)
安定性とは、運動やスポーツをしている最中、関節の動きをサポートし続けたり、姿勢を維持し続ける能力のことです。安定性を獲得するためには、とても高いレベルの筋持久力が必要となります。
不安定な場所(バランスパッドやBOSUなどの不安定なモノに乗ったり、バランスボールを使うなど)でエクササイズを行うことで、身体自体のバランス能力が高まりやすくなり、効率的に安定性を獲得することができます。
「バランスボールを使った体幹トレーニング5選【上級者向け】」では、バランスボールを使ったエクササイズを紹介しています。
筋持久力(Muscular Endurance)
筋持久力とは、筋力を長い時間発揮し続ける能力のこと。
「持久力」という言葉が入っているので、どうしてもマラソン選手をはじめとした持久系アスリートが必要な能力というイメージですが、運動・スポーツをするすべての人に必要な能力です。
上の安定性でも出てきましたが、運動中に「姿勢」や「体幹」を維持するためには、この筋持久力が必須です。
基本的な安定性や筋持久力があってはじめて、以下で紹介する「筋肥大」や「筋力」を安全に鍛えていくことができます。
筋肥大(Hypertrophy)
筋肉(骨格筋)の筋繊維を太くすることを筋肥大と言います。または、1つ1つの筋繊維の断面(=Cross-sectional Area)を大きくする、とも言われたりします。
筋力(Strength)
外部の負荷に対して、それに対抗するテンションを身体から生み出す神経筋の能力のことを言います。
筋肉1つ1つにはそれぞれ「運動ユニット(=Motor Units)」と呼ばれるものが存在していて、この運動ユニットが脳からの指令を受けて、筋肉を収縮させたり、リラックスさせたりしています。
運動をほとんどしていない人は、筋肉(筋繊維)にたくさんある運動ユニットの一部しか使っていません。
例えば、ある筋肉に100個の運動ユニットがあるとしたら、50個しか使っていなくて、あとの50個は活動していません。
運動・筋力トレーニングなどをすることによって、まずはこの活動していない残りの運動ユニットが活動を始めるため、「筋力」が向上します(=運動ユニットが一度に50個活動するより、一度に80個活動する方が、より強い力を生み出すことができます)。
そのままトレーニングを続けていくと、その100個の運動ユニットのほとんどが働くようになります。すると今度は、その1つ1つの筋繊維が太くなっていって(=筋肥大)、さらに筋力が向上していきます。
外部からの負荷をどんどん大きくしていくことで、活動する運動ユニットが増え、さらに筋肥大も起きていきます。
よって、その外部からの負荷にまず耐えられる筋肉・腱・靭帯の安定性がないことには、筋力が向上する前に壊れてしまいます(=怪我をする)。
パワー(Power)
「最大の力を(=the greatest possible force)」「最速で(=the shortest amount of time)」生み出す能力のことをパワーといいます。よく「筋力 × スピード」と表されたりもします。
つまり「いかに速く運動ユニットを一気に活動させられるか」ということ。
「筋力 × スピード」なので、スピードを維持したまま筋力を向上させる、もしくは筋力は維持したままスピードをあげることで、パワーが向上します。
パワーを向上させたい場合は、筋力を向上させるトレーニングと、スピードを向上させるトレーニングの療法を行う必要があります。
筋力トレーニングのメニューの組み方【7つのポイント】
目標が決まったら、その目標を達成するために知っておくべき7つのポイントを考えながら、トレーニングメニューの組み方をお伝えします。
1)回数(Repetitions)
目標によって、1セット内で行う回数を変えます。向上させたい能力によっての回数の目安は以下の通りです(1RMについてはもう少し読み進めたところに説明があります)。
- 安定性・筋持久力:12〜20回(1RMの50〜70%)
- 筋肥大:6〜12回(1RMの75〜85%)
- 筋力:1〜5回(1RMの85〜100%)
- パワー:1〜10回(1RMの30〜45%、もしくは体重の10%)
筋力トレーニングを始めてすぐの人は、「回数多め & 重量軽め」でメニューを組みましょう。つまり、「〇〇〜◇◇」となっている回数の、一番多い回数でますは始めます。
回数を多くやって、筋肉・腱・靭帯などの安定性を獲得してから、徐々に重量を重くして、筋肥大や筋力アップに進みましょう。
2)セット数(Sets)
基本的には、1セットで多くの回数を行うときは、負荷(強度)は低く、セット数は少ないです。逆に、負荷が上がれば上がるほど1セットの回数は少なくなり、その分セット数が増えます。
よってこのセット数は、以下で紹介する4)の「負荷・強度」と一緒に考えていきます。
目標によってのセット数は以下のように組みましょう。
- 安定性・筋持久力:1〜3セット
- 筋肥大:3〜5セット
- 筋力:4〜6セット
- パワー:3〜6セット
3)トレーニング量(Training Volume)
トレーニング量とは「回数 × セット数」のこと。上記した1)と2)の2つを掛け合わせたものです。以下に示す回数以内におさめることで、トレーニングのやりすぎ=オーバートレーニングを防ぎます。
- 安定性・筋持久力:1つのエクササイズにつき、36〜75回
- 筋肥大:1つのエクササイズにつき、27〜36回
- 筋力:1つのエクササイズにつき、18〜24回
- パワー:1つのエクササイズにつき、12〜20回
例えば「筋肥大」を目的にトレーニングする場合、1)の回数は「6〜12回」で、2)のセット数は「3〜5セット」となっています。どちらとも最大の方をとると「12回 × 5セット」となりますが、これはトレーニング量でいうと「60回(12 × 5)」となります。
筋肥大のためのトレーニング量の目安は「27〜36回」となっているので、「12回 × 5セット」は多すぎる、ということになります。
よって筋肥大が目的の場合は、「10回 × 3セット(=30回)」「8回 × 4セット(=32回)」「12回 × 3セット(=36回)」などの組み合わせになるでしょう。
筋力トレーニング初心者は、1セットの回数を増やしたいので、「12回 ×3セット」から始めると良いと思います。
4)負荷・強度(Intensity)
「負荷・強度」の決め方は、その人それぞれの現在の筋力レベルによって変わっていきます。トレーニング始めたての人とプロ野球選手では、同じ「スクワット」というトレーニングをやるとしても、同じ強度でやらないのは当然ですよね。
その人の筋力レベルは、「その人が1回ギリギリ持ちあげられる重さ」を一般的に基準とします。この「1回ギリギリ持ち上げられる重さ」を1RM(Repetition Maximum)と言います。
自分が行いたいトレーニング種目の1RMを知ることで、自分の目的にあった強度を決めることができるようになります。
- 安定性・筋持久力:1RMの50〜70%
- 筋肥大:1RMの75〜85%
- 筋力:1RMの85〜100%
- パワー:1RMの30〜45%(ウエイトトレーニングの場合)、もしくは体重の10%(メディシンボールを使用する場合)
自分の1RMを知るためには、自分が1回ギリギリ持ち上げられる重さを実際に持ち上げてみて、調べる必要があります。よって、自分にとってかなり重い重量を扱うことになり、トレーニング初心者が1人で行うのは非常に危険です。
また、1RMの調べ方というのがあります。適当にやってしまうと、正確な1RMが測定できません。1RMを調べたい時は、専門のコーチやトレーナーにお願いをして、手伝ってもらいましょう。
4−1)1RMを測定するのはちょっと面倒、という人のために
1RMを測定してトレーニングを行う際の重さを決めるのが理想的ですが、そこまではやらなくてもいいや、という人もいると思います。
実際に、1RMを測定するのは怪我のリスクもありますし、トレーニング初心者にはあまりオススメしません。専門のトレーナーがついてくれれば安心ですが、そうなるとお金もかかるし…という人もいると思います。
1RMは測定したくない(するのが面倒くさい)けど、ある程度筋力をつけていきたいなーという方は、私の個人的な意見としては、「回数」を基準にするといいと思います。
上記しましたが、例えば「筋肉を大きくしてムキムキになりたい!」という目標の方は、筋肥大をさせるための回数の目安が「6〜12回」なので、1セットで6〜12回持ち上げるのがギリギリだ、という重さを使ってトレーニングをするようにしましょう。
もし「20回連続でできる」という重さを使っている場合は、それは筋肥大のための重さとしては不適切です。少し重くしましょう。
逆に3回しか持ち上げられない、という重さであれば、それは筋肥大ではなく筋力やパワーを向上させるために適切な重量なので、筋肥大が目的の人は、6〜12回は持ち上げられる重さに調整しましょう。
複数回連続で持ち上げられる、ということは、1回ギリギリ持ち上げられる重さよりも軽いので、怪我のリスクも軽減できます。
ただ、いくら軽い重量を扱うといっても、フォームが悪ければ当然怪我のリスクは上がります。筋力トレーニングを全然やったことがないという方は、一度でもトレーナーの方にフォームをチェックしてもらい、安全に楽しく行いましょう。
代表的な筋力トレーニングの1つとして「スクワット」が挙げられます。スクワットの正しいフォームについて「正しいスクワットのやり方を徹底分析|確認すべき12のポイント」の記事で解説しています。スクワットをトレーニングメニューに組み込みたいという方は、ぜひ一度読んでみてください。
5)休憩時間(Rest Interval)
筋力トレーニングは通常、複数セット行います(上記の「セット」項目参照)。
1セットをやり終わったら次のセットを始めるまで休憩をするのですが、この休憩時間の長さも、トレーニングの目的によって、短めの休憩をとるのか、長めに休憩をとるのか、変わってきます。
- 安定性・筋持久力:30〜60秒
- 筋肥大:45〜90秒
- 筋力:3〜5分
- パワー:3〜5分
休憩が短すぎると、うまく力が入らず(=これもトレーニングの1つではありますが)、怪我のリスクが上がります。
逆に休憩時間が長すぎると、効率的な筋力トレーニングにはならず、自分の目的達成になりません。
トレーニング初心者は、最初はある程度長めにセット間休憩をとることをオススメしますが、慣れてきたら「回数」「セット数」「強度」だけではなく「休憩時間」も気にすることができると、より効率的な筋トレとなるでしょう。
6)トレーニング頻度(Training Frequency)
目的によってトレーニングをどれくらいやればいいのか(=1週間に何日トレーニングすればいいのか)、というのは、今でも研究が現在進行形でされていて、様々な意見が飛び交っている分野だそうです。
多くの研究で示されていることは、どんな目的であれ、筋肉を発達させていくためには1週間に3〜5日はトレーニングをする必要がある、ということです
1週間に1〜2日のトレーニング頻度だと、筋肉の能力は充分に維持されます(=発達はあまりしていかない)。
筋力トレーニングによって筋肉をより大きくさせたかったり、より強くしていきたい、という場合は、最低でも週3日のトレーニングが必要なようです。
7)トレーニング期間(Training Duration)
まず、1回のトレーニングは合計で何分くらいやれば良いのでしょうか?
参考文献によると、ウォームアップとクールダウンの時間は除いて「60〜90分」のトレーニング時間が理想的だ、と示しています。
90分以上筋トレを続けることは、体内のエネルギー量が極端に少なくなり、それによって一時的にホルモンバランスが崩れたり、免疫力が低下する可能性があるため、風邪をひきやすくなったり、体調を崩しやすくなるというデメリットがあるようです。
次に、1つのトレーニングはどれくらいの期間続ければ良いのでしょうか?
これは、少なくとも「4週間(約1ヶ月)」は続けないと、そのトレーニングの効果はあらわれてこないだろう、と言っています。これはあくまで最低ライン。人によっては6週間、もしくは2ヶ月くらい続けないと、効果をしっかり感じられない可能性もあります。
トレーニングは、やればすぐに効果がでる「短期的な」ものではありません。「長期的に」「長い目で見て」とにかく地道に続けることで、自分の目的が達成されていきます。
まとめ
もし筋力トレーニングをすることで達成したい目標が明確にあるのであれば、これだけのものをしっかり考えてメニューを組む必要があります。
いろんな要素が筋力トレーニングには関わってきますが、逆に言えばこの7つのポイントをしっかりと押さえるだけで、かなり効果的なトレーニングメニューとなります。
どうせやるならやみくもにやるのではなく、基本をしっかり抑えて、効率的で効果的な筋力トレーニングを行いましょう
Comments are closed.