「筋肉を鍛える」ために、あなたはまず何から始めるでしょうか?とりあえず「筋トレ 胸」とか「脚 鍛える」とググってみたり、YouTubeで検索してみたりする人が多いかもしれません。
筋肉を鍛えて、筋肉をつけるためには、最低限守るべきルールがあります。それが「トレーニング6原則」と言われるもの。この6原則を知らずに、ただガムシャラに思うがまま筋トレをしても、効果的に筋肉をつけていくことはできません。
もしあなたが、パーソナルトレーナーなどはつけずに、まずは自分で筋トレを始めてみよう!と思っているのであれば、このトレーニング6原則は必須の知識です。ぜひこの6原則を守って、効果的に筋肉を鍛えていきましょう。
本やトレーナーによって、「5原則」と言ったり、「7原則」と言ったり、「5原則と3原理」と言ったりもします。この理由は、原理・原則にはいくつか似ているものがあり、それらを別々に説明するか、一緒にしてしまうか、の違いです。私は似ているものはまとめてしまったので、いくつかはまとめた結果「6原則」となりました。
>>参考文献はこちらです。
- NASM Essentials of Sports Performance Training
アメリカのNational Academy of Sports Medicine(NASM)という団体が出している資格、NASM-PES(Performance Enhancement Specialist)のための教科書です。私は2015年にこの資格を取得しました。
トレーニング6原則|筋トレにおける基本的なルール
それでは早速、トレーニングをする上で最低限覚えておくべき6つの原則・ルールを1つ1つ解説していきます。
1)特異性の原則(SAIDの原則):鍛えたいところを鍛える
特異性の原則は「SAIDの原則(Specific Adaptation to Imposed Demandsの頭文字をとったもの)」とも言われます。これは「身体は、与えられた負荷に対してのみ適応して変化していく」というルールのこと。
簡単に言うと、もしあなたが腕を鍛えたいのであれば、腕を鍛えましょう、ということ。鍛えたい部位に負荷を与えることで、その部位は与えられた負荷に適応して、筋肉がついていく(=変化していく)ということです。
腕を鍛えたいと思っているのに脚を鍛えても、腕には負荷が与えられていないため、腕は鍛えられません。筋肉がついていくのは、負荷が与えられた脚です。
与えられた負荷に対して身体はしっかり適応し、変化していきます。負荷が与えられなければ、適応ももちろんしません。
もう1つ、特異性の原則に関する例を挙げます。
重い負荷を使って(バーベルやダンベルなど)トレーニングをすれば、その重さに耐えられる(持ち上げられる)ように身体は適応していきます(=筋力の向上)。
スピードは遅いけど長く走ることを続けていくと、長い時間走ることができる身体に適応していき、筋肉は長い時間活動をしても疲れないようになっていきます(=筋持久力の向上)。
遅いスピードで長い距離を走るトレーニングをいくらやっても、短距離で速く走る能力は身につきませんし、5キロのダンベルでずっとトレーニングをしていても、30キロのダンベルを何回も上げられる筋肉は発達しません。
自分が鍛えたい部位・能力に合わせて、適切に負荷を与えるトレーニングを行うことが大切です。
2)過負荷・漸進性の原則:徐々に負荷を強くしていく
過負荷・漸進性(ぜんしんせい)の原則とは、「身体に与える負荷を徐々に強くしていくことで、身体は継続的に変化していく」というルールのこと。
適切な負荷をかけていかないと、その部位は強くなっていきません。1)の特異性の原則で解説しましたが、身体の組織は与えられた負荷に対して適応していきます。
ずっと20キロの負荷がかかっている部位は、その20キロには耐えられるように適応しますが、25キロには耐えることができません。なぜならその部位は、25キロの負荷には適応していないから。
よって、20キロの負荷に耐えられるようになったら、次は25キロの負荷に耐えられるようにするために、25キロの負荷をかけていかなければいけません。
これが、過負荷・漸進性の原則です。その部位をどんどん強くしていくためには、与える負荷も徐々に強くしていく必要があるのです。
ある程度25キロの負荷を与えていると、その部位は25キロに耐えられるようになります。そのタイミングで30キロの負荷をかけ始めると、今度は30キロに耐えられるように適応していきます。
この原則で大事なメッセージは 「”徐々に” 負荷を高くしていく」ということ。もっと高い負荷に耐えられる身体を作りたい!と、今20キロの負荷までしか耐えられない部位に40キロの負荷をかけてしまっては(=高すぎる負荷)、その負荷に適応する前に壊れてしまう可能性があります(=怪我をする)。
“徐々に” 負荷を増やしていくということが、安全に、そして効率よく筋肉をつけていくルールです。
3)反復性・継続性の原則:続けなければ効果は得られない
反復性・継続性の原則とは、「トレーニングの効果を得るためには、一定の期間反復・継続する必要がある」というルール。逆に言うと、「トレーニングの効果は1回では得られない」というルールとも言えます。
トレーニングに限らず、なんでもそうだと思います。1回やって100%習得できることなんてありませんよね?何回もやることで、やり方を覚えて、よりうまくできるようになったり、より早くできるようになりますよね?
筋トレも、何度も反復し、継続することで、身体・筋肉は徐々に適応し、強くなっていきます。
この原則は、2)で紹介した「過負荷・漸進性の原則」とすごく関連が強いものです。
25キロの負荷に耐えられるようにするためには、25キロの負荷を身体にかけていかなければいけないのですが、 “1回だけ” 負荷をかけても、身体はその負荷に耐えられる身体にはなりません。 “何度も継続して” 負荷をかけることで、身体は徐々に適応していきます。
山本ケイイチさんが書かれた「仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか」という本の中でもこの「継続性」について書かれています。この本の中では、たとえ1ヶ所のみ、1つの筋肉のみを鍛えるだけでも、約1ヶ月半くらいは同じ方法・トレーニングを続けないと結果は出てこない、と書かれています(私の好きな本です。興味がある方はぜひ)。
4)個別性の原則:その人・その選手のレベルに合ったトレーニングを!
個別性の原則とは、「年齢や性別、体力レベル、トレーニング経験、達成したい目標などに合わせて、その人に合ったトレーニングを行いましょう」というルールです。
10人に全く同じトレーニングプログラムを提供したとしても、10人全員が同じ効果を得ることができる訳ではありません。「全身の筋肉を鍛えたい」という目標であったとしても、20歳の野球選手が行うトレーニングと、60歳のおばあちゃんが行うトレーニングと、6歳の男の子が行うトレーニングが、全く同じで良いわけはありませんね。
その人にあったエクササイズ。その人にあった強度。その人にあった頻度。その人の目的にあったトレーニング。個別性をしっかり考えて運動・トレーニングの計画を立てることで、効率的に目標の達成に近づきます。
このトレーニングさえしていれば誰でもオッケー!という方法はないのです。
5)意識性の原則:鍛えている部位を意識する
今回の参考文献であるNASM-PESの教科書には、この「意識性の原則」と、下で紹介する「全面性の原則」については原則としては紹介されていないのですが、一般的によく原則として含まれるので、紹介しておきます。
意識性の原則とは、「このトレーニングは何のために行なっているのかを理解し、意識した上でトレーニングを行いましょう」というものです。
「このトレーニングは胸の筋肉を鍛えている」「サッカーのキック力を鍛えるために今日は下半身と体幹を鍛える」といったように、目的をしっかり意識しながら行うことは、何も考えずにトレーニングするよりもはるかに効果的です。
6)全面性の原則:運動・栄養・休養など様々な要素にも気を配る
筋肉を強く太くしていくためには、ただただトレーニングだけをガムシャラに行うのは効率的ではありません。トレーニングをしたら、たんぱく質を含めた栄養をしっかり補給することや、ストレッチなどを行なって疲労した筋肉を休ませることも大切です。
トレーニングを行なっても、栄養補給ができていなければ筋肉は逆に分解されてしまって、筋肉がなくなってしまいます。筋肉に回復の時間を与えなければ、これもまた筋力は落ちてしまうのです。
減量が目標の場合も同じ。ひたすら有酸素運動をしても、その日寝る前にラーメンや揚げ物を食べてしまったら、せっかく消費したエネルギーはあっという間に摂取カロリーによって上回ってしまいます。
運動・トレーニングのみではなく、栄養や休養など、他の要素にも気を配って、目標達成に向かっていくことが大切です。
まとめ
「トレーニング6原則」について解説してきました。以下、箇条書きで改めてまとめます。
- 特異性の原則(SAIDの原則):鍛えたい所を鍛える
- 過負荷・漸進性の原則:徐々に負荷を上げていく
- 反復性・継続性の原則:続けなければ効果がない
- 個別性の原則:その人のレベル・目標に合ったトレーニングを
- 意識性の原則:鍛えている部位を意識する
- 全面性の原則:運動・栄養・休養など様々な要素にも気を配る
ただむやみやたらに筋トレをしても、効率的ではありません。筋トレの基本であるこのルールを最低限守ることで、効果的なトレーニングを行うことができます。ぜひあなたのトレーニングに活かしてください。
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